博多座 『二月花形歌舞伎』    (2018)

為政者は逃げたり自殺したり、若い信奉者は狂奔し、こどもはころされる。そういうもんかも、負け戦とか、滅亡って。と、戦争映画を見て思った次の日の『義経千本桜』。これ、滅ぶってことが、凝縮されてるなあ。 兄頼朝と仲の悪くなった義経(中村七之助)が…

スズナリ 唐組×東京乾電池コラボ公演 『嗤うカナブン』

フィルムノワール?まず、そこからだ。フランス映画じゃなくて、第二次大戦頃のアメリカの犯罪映画。『飾り窓の女』とか。それなら観た。犯罪者になってしまった大学教授が追いつめられていく映画で、いよいよ窮地に立った時、いやになって鞄からキャラメル…

渋谷TOHO 『マンハント』

控えめに言って、ジョン・ウーの『ミッション・インポッシブル2』はとても好きな映画だった。かっこいいとか美しいとか鳩が飛ぶとか、人はいろいろ言うだろうが、わたしにとってあれは「話の早い映画」だ。スピンする車のスローモーションのなかで、男と女の…

東京芸術劇場 プレイハウス 『密やかな結晶』

石原さとみに点が辛い。 なぜって石原さとみのパントマイム修業をテレビで(2012、NHK)観てるから。あの時見た舞台上での心のしなやかさ、演技のみずみずしさは、忘れられない。 今日はその石原さとみ主演の『密やかな結晶』、原作は小川洋子の小説だ。本を…

日比谷コンベンションホール 『デイヴィッドとギリアン 響きあう二人』

熊蜂の飛行、リムスキー・コルサコフ。朱赤のつるつるしたルパシカを着た老人が、背を丸めてピアノの上に屈みこんでいる。二呼吸くらいすると必ず客席の方に顔を向け、歌い、独り言を言い、凄い勢いで指を動かして、ぶんぶん飛び回って一時も休まない熊蜂を…

渋谷TOHO 『嘘を愛する女』

その朝日新聞の記事を私も読んだ。不思議な話さ。5年連れ添った医師の夫が死んでみると、その夫の名前は嘘だった。医師でもなかったし戸籍もなかった。私の夫は誰だったのでしょうか。折に触れ私も考える。新聞に載っていた誰でもないあの人は、誰だったんだ…

ユーロスペース 『花筐』

映画、すきかなあと思う。映画すきかなあ?シアターコクーンから3分くらいの所にユーロスペースあるのに全く行かず、知らずに血まみれ映画見ちゃって激怒する私は。好きなの? そういう大きい疑問符を頭の上に載せたまま、『花筐』を観に行く。 『花筐』は壇…

ブルーノート東京 ジョン・ピザレリ

セカンドショウを終えたジョン・ピザレリが、小さな丸テーブルの前に腰かけ、軽くお酒を飲んでファンにサインをしている。 ナット・キング・コールで聴いた曲、チェット・ベイカーで聴いた曲、勿論シナトラ、勿論ジョビン、今聴いたいろんな曲が、酵母みたい…

武蔵野市民文化会館 大ホール 『ブルガリアン・ヴォイス アンジェリテ』

不揃いな雪。堅雪、牡丹雪、どんな雪だってよく見ると形は不揃いだ。綿毛のような雪は身をゆすって回転しながら落ち、大きな雪は直線的にゆっくりと地面を目指す。細かい雪は風に流されて横ざまに下へ、下へと落ちてゆく。一つとして同じ雪片はないけれど、…

シアターコクーン・オンレパートリー2018 『プルートゥ PLUTO』

ホース、操作盤、コード。今日は最前列、緊張しちゃうなあ。車輪、基盤、スイッチ、扇風機のガード。舞台前面にしつらえられたがらくたの、さまざまを眺めわたす。トルソー、えっ、マネキンの足の先。思わず席から立ち上がってしまう。下手の端の瓦礫から、…

DDD青山クロスシアター 『ぼくの友達』

ふわっとした長めの髪にサングラス、黒いスーツに白いネクタイの青年トニー(辰巳雄大)。彼の正体はわからない。ただ感じよく笑いながら、邸宅の主イタリアン・マフィアのフランキー(田中健)に、「あなたの友達パーシー・ダンジェリーノ」の友達だといい…

シス・カンパニー公演 『近松心中物語』

気鬱。でてくると傘屋与兵衛(池田成志)は、おとりまきの弥七(陣内将)にそんなことを言われる。 舞台では亀屋忠兵衛(堤真一)と梅川(宮沢りえ)、与兵衛と女房お亀(小池栄子)の心中が二重に語られる。梅川忠兵衛が美しく散っていくのに対し、お亀と与…

日生劇場 『黒蜥蜴』

「フローティングワールド」 と、思いながらゆっくり目を閉じる。「時間の冷たい急流」を、上手から下手に流れてゆくビルの窓、舞台奥からせり上がってくるエレベーターの骨組みの映像を見ていたら、目眩が来ちゃったのだ。 たぶん、黒蜥蜴の棲む世界は、風…

全労済ホール/スペース・ゼロ提携公演 『四谷怪談』

三時間半の大作。四谷怪談のお岩を巡る男たちの嫉妬や、四谷怪談が一種の家庭内殺人であることから、現代の事件、俗に北九州連続殺人事件と呼ばれる家族の崩壊というか、壊滅事件を詳細に語り、二つを交叉させようとする。 舞台の頭上にはニワトリなどの飼育…

彩の国シェイクスピア・シリーズ 第33弾 『アテネのタイモン』

「俺をほめたじゃないか!」 財産を失い失意の底にいるタイモン(吉田鋼太郎)が、軍を率いるアルシバイアディーズ(柿澤勇人)の胸ぐらをとって叫ぶ。金があり、友人たちに恐ろしく気前よく振る舞っていたころの自分に対する言葉を、タイモンは責めるのだ。…

Bunkamuraシアターコクーン DISCOVER WORLD THEATRE vol.3 『欲望という名の電車』

大竹しのぶがもうすでにこの芝居で紀伊國屋演劇賞を受賞している。えええ?見物しようと靴ひも結んで顔をあげたら、ゴールしている人が見えたような気持ちー。でもそれも仕方ないのだった。圧倒的な集中力、圧倒的な演技で、大竹しのぶは芝居を引っ張ってい…

世田谷パブリックシアター 日韓文化交流企画 『ペール・ギュント』

ストップモーションが美しい。天鵞絨の赤い緞帳が開くと、そこは荒涼とした河川敷のような景色、上手と下手を堤防や橋梁によくある巨大なコンクリートの壁が遮っている(グエムルを思い出した)。奥からスローモーションで群衆が出てくるが、そのスローは日…

M&Oplaysプロデュース 『流山ブルーバード』

流山で近藤勇が、とか得々と言い出す人間は、永遠にこのコミュニティには入れない。地元、地元の人間、地元のスナック、地元の魚屋、地元の友達、地元の不倫、地元の連続殺人。 兄国男(皆川猿時)の鮮魚店で働く高橋満(賀来賢人)の体には、「地元の」と書…

劇団民藝 『「仕事クラブ」の女優たち』

「最後吐いてました、原稿書くのに」(パンフレット、長田育恵) そうだろうなー。ただでさえ演劇ってその場で消えてしまうもので、それに消し去りたいとか貧しいとか弾圧とかの条件が加わると、どれほど時代と資料に穴が開くか、想像に難くない。たいへんだ…

すみだトリフォニ―ホール 『55th Anniversary The Chieftains チーフタンズ来日公演2017』

THE CHIFTAINS 55TH ANNIVERSARY。その題字に続いて、チーフタンズ結成の1962年から、今日までの歴史が、スライドの写真で紹介される。古い写真の中で、笑っているパディ・モローニ、アメリカ初公演、ロイヤルアルバートホール完売(1975)、映画『バリー・…

赤坂ACTシアター 笑福亭鶴瓶落語会     (2017)

ぱっとあらわれて、さっと演じ、すっと帰る。鶴瓶って、じつはそこんとこをとても大切にしているような気がする。「粋な」(関西発音でお願いします)感じ、って言語化する私は野暮の極みですけどね。 劇場では、景気のよいお囃子が演奏されている。途中で、…

新宿ピカデリー 『パーティーで女の子に話しかけるには』

クロイドン。映画に登場するこの街は、ものすごく思春期っぽい。なにもかも古くて灰色か茶色、とげとげしくて寒々としていて居場所がない感じ。ライブハウス(半地下!)の外の舗道を流れる水まで冷たく拒否的に見える。 エン(アレックス・シャープ)はこん…

Bunkamuraオーチャードホール 『55th Anniversary The Chieftains チーフタンズ来日公演2017』

日本人を踊らせた!ミヤザキハヤオくらいの年配の、ミヤザキハヤオくらい一言ありそうなおじさんやおばさんを!と、つないだ両手を上げたり下げたりしながら、ブルターニュのケルト音楽の悲しいような切ないような、美しい節に乗って通路や舞台を進んでいく…

ナイロン100°C 44th SESSION 『ちょっと、まってください』

開演前、キャスト表の、 廣川三憲:男7(警察署長) 藤田秀世:男8(会社員) というその多めの数をみて、それがもうすでに、別役世界を拡張しているようで、ちょっとわくわくする。下手に、窓を照らす大きな月、青い月光。 魚の開きのように、同じ建物が…

新国立劇場小劇場 『プライムたちの夜』

暗い色の布地がかけられた安楽椅子に、85歳のマージョリー(浅丘ルリ子)が、いかにも具合悪そうに横になると、自然と私の頭には、エッグチェアにきれいに足をそろえる浅丘ルリ子が蘇り、いやでも「記憶のニュアンス」について考えるのだった。人工知能?そ…

シアターコクーン・オンレパートリー2017 『24番地の桜の園』

くしだかずよし、攻めてる。そこにすごく吃驚する。尊敬する。この攻めの姿勢を評価するかどうかで、作品の評判が、変わっちゃうんだろうなー。 ヒロインのリューバ(ラネーフスカヤ夫人)を親しみやすい小林聡美が演じる。原作に、「気さくで、さばさばして…

イキウメ 『散歩する侵略者』

高速道路の車の音と、波の音とが混ざって聴こえるような。けれどやっぱり波の音だろうか。はるか遠くから打ち寄せる長く続く波音。悪い夢のように椅子がいくつも、思い思いの格好で倒れている。アスファルトの上にアスファルトが乗り上げたように見える三分…

東京芸術劇場 『表に出ろぃっ!』English version  ”One Green Bottle"

「テレビを体に埋め込まれた部屋」、配線色のゴールドとシルバーとコッパーがだんだらに、揚幕みたいにすべてを染め分ける。 開演10分、イヤホンガイドを外す。なぜなら、目の前の芝居とイヤホンの中、二重に芝居が進行し、ニュアンスが複雑になりすぎて追い…

東京芸術劇場 東京芸術祭2017芸劇オータムセレクション『オセロ―』

軍服姿の男(キャシオー=ロベルト・デ・ホーフ)が背景の襞の寄った幕を次々に剥がすと、幕は風をはらんで躍り上がり、沈み込み、舞台の人物に飛び掛かる制御できない巨大な生き物のように見える。中から現れるのは鉄骨の矩形の部屋、細い黒い骨組みを除い…

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第55回本公演 『カジノ・シティをぶっとばせ!!~丁半コマ揃いました~』

いろいろびっくりである。まずキャストの配役表がない。誰が誰だかわからない。1000円を超える立派なパンフレットがついているのに。カジノを日本に作るあれやこれ、その候補地の一つ京都の片田舎、梶高校の同窓会のシーンが、冒頭なのにかなりのりが悪い。…