Bunkamuraザ・ミュージアム 『国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア』

トレチャコフ美術館展。どの所蔵品の上にも、パーヴェル・トレチャコフの信条のようなものが、うっすらかかっている。なんだろ、時代思潮ぽいものかなあ。それが絵を皆ロマンティックにしているような気がする。「衒いのない国土への愛」「疑うことを知らな…

東京フォーラムホールA 新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS 小坂忠 「ほうろう」

開場めっちゃ遅。場内アナウンスが遅れをお詫びするが、WOWOWをウォウウォウとか武部をタケブとか言っちゃって、読めないのか!と、順調に機嫌が悪くなる。2階席のうえの、うえの方に座った時にはすでに7時5分前で、遠い舞台にアルバムと同じ絵柄のオレンジ色…

新国立劇場小劇場 『誰もいない国』

勇気ある。作品に、演出に、俳優に、プロダクション全部が「勇気プロジェクト」だよ。作家の心の芯、作品の奥底、極北へ近づいてゆくじりじりした歩み、ほんとに怖く、すごいなと思った。かかわりあう、そしてかかわりあわない、四人の男。台詞は細かくカッ…

新橋演舞場 十一月新派特別公演 『犬神家の一族』

純情という物はふつう、世に表れない物で、一人で生まれ一人で死ぬ。純情が外に出るのなら、それはうかつだったか、もはや純情でなかったかのどっちかだ。 ここに純情を守れなかった一人の男犬神佐兵衛。彼のすることなすことからいちいちあやつりの糸が垂れ…

上野の森美術館 『フェルメール展』

「俺は空気を描くけん。」 と、デルフトのフェルメールが言ったかどうだか、たぶん言わないけど、ほかの画家たちが挙って「絵」を描く中、フェルメールは見えない「空気」、確かに空間を充たしているのに、とらえられない自由な広がりを画面に定着しようと苦…

赤坂ACTシアター 『笑福亭鶴瓶落語会    (2018)』

裂帛の気合。さっきまでのへなへなの入り太鼓がうそのよう。お囃子の三味線、笛、締太鼓が冴えて聴こえる。三味線の音に艶があり、清搔きが気持ちいい。それぞれが組み合って曲がつづれ織りのようにどっしりしている。手に取れそうな実在感。そしてまるで発…

日本橋三越本店新館7階 写真展「木村伊兵衛 パリ残像」

1954-1955、『木村伊兵衛外遊写真集』として後にまとめられた写真、パリの写真の展覧会である。「外遊」という言葉のすんごいものものしさ、彼我の距離は果てしなく遠かった。写真の展示の最初に朔太郎の、ふらんすに行きたいけれども無理だから背広買う、っ…

恵比寿ガーデンホール 『Live Magic』  2018

「バラカンさんのジャズのコンピレーションアルバム貰わなくちゃ!」一生懸命ホール入口でボルボのアンケートに答えるのであった。 二台ディスプレーされたうちの赤い方(フュージョンレッドメタリック、XC40TA)、背の高い頑丈そうな車の周りをまわって、運…

日本・スウェーデン外交関係樹立150周年 サーカス・シルクール 『LIMITS』

スウェーデン語を習い始めのころ、ワークブックに、「スウェーデン人とはなんですか?」という、難しい問いがとつぜんでてきた。「国籍」って単語を急いで調べて答えたけど、「あれはなんですか」レベルの人にすごい質問をする。 現代サーカス(アーティステ…

名取事務所公演 別役実連続上演シリーズ第8作目 別役実書下ろし作品 『――注文の多い料理昇降機――〈ああ、それなのに、それなのに〉』

舞台上空に、瞳孔のような星雲のような月のようなドーナツ型の鏡が吊るされている。舞台の表面は砂で覆われ、中央のタイルを侵食しつつある。電信柱は傾ぎ、錆び色のバス停は折れて、ベンチの背板はない。 世界はもう終わったんだね。そして破れたんだね。そ…

赤坂ACTシアター ダイワハウスpresents  ミュージカル 『生きる』

今はもう『七人の侍』を作れる時代じゃないんだ、と、90年代の初めごろ、黒澤がやや憤然と言っていたような気がする。それはこのミュージカル『生きる』の冒頭で、市役所の人がさっと膝を上げたときの、そのひざ下の長さを見ただけでわかる。戦前生まれと現…

池袋芸術劇場シアターイースト RooTS Series 『書を捨てよ町へ出よう』 寺山没後35年記念

気が重い夜、座席に向かって息を吐き、くるっと振り返って舞台を見る、とたんに胸が広々として気持ちがあがる。上手奥のスクリーンに『書を捨てよ町へ出よう』と凝った文字で書いてあり、下手スクリーンには空色のウサギの模様(確かにあれはミナペルホネン…

劇団民藝 『時を接ぐ』 (岸富美子・石井妙子『満映とわたし』〈文藝春秋刊〉より)

どうする民藝! どうした丹野郁弓! どうなってる黒川陽子! …と、縺れてなかなかほどけない焦燥感でいっぱいになって帰ってきた。まず、私が「若いほう」に数えられる客席がいかん。幅広いおきゃくさんに来てもらわないと。たまに若い人みても「関係者の孫…

ふくふくや第19回公演 『ウソのホント ―真実なんてクソくらえ!―』

自分が好き。自己肯定感ともいうけれど、山野海の「自分が好き」は人よりちょっと分量が多い。それが芝居を「お姫様(自分)の芝居」にしてしまいそうになる。いつも、(いい役で嬉しい)と見えるのだ。確かに以前観た時より抑制はきいている、だが、今回、…

渋谷TOHO 『プーと大人になった僕』

「おやすみのおいのり」(クリストファー・ロビンがおいのりをする)という詩の朗読レコードを、いじめっ子たちは繰り返し繰り返し、クリストファー・ロビンに聴かせた。その「面白さがすりきれて」しまうと、彼らはレコードをクリストファー・ロビンに進呈…

渋谷TOHO 『万引き家族』

この映画って、「フリーハンド」だなー。 定規やコンパスを使って作られた映画じゃない、まっすぐに引いたつもりの線でも少し曲がり、随時紙の凹凸を拾って太くなり、質感が出てしまう。「家族」「絆」ときれいに整理された「概念」を、「万引き家族」の、時…

オンワードpresents新感線☆RS 『メタルマクベス disc2』

「お父さんの芝居観たことあります。」お父さん世代でーす。 前から3列目、あとからあとから座る客の顔がみな、思わず、そして必ずほころんでいる舞台の近さ。 真夏の『メタルマクベスdisc1』の次は、この『disc2』、主人公のランダムスターを歌舞伎俳優の尾…

劇団時間制作第十七回公演 『白紙の目次』

まず、劇場の大きさに比して、声が大きすぎる。頑張ろうという気持ちが声に出てしまっている。頑張る気持ちは集中力に使おう。チラシにあらすじが書いてあるが、それが面白そうでなく、「テーマは『依存』。」ときちんと説明されていて、そんなことは観るほ…

東京富士美術館 『長くつ下のピッピの世界展  リンドグレーンが描く北欧の暮らしと子どもたち 』

「『ピッピ』シリーズが人生を変えた、と語ってくれた人も大勢います。でもね、最高のお賞めの言葉は、あるときだれとも知れないご婦人が紙きれに書いてくれたことづてです。『暗鬱だった子ども時代を、輝かせてくださって、ありがとうございました』。これ…

る・ばる Vol.24 さよなら身終い公演 『蜜柑とユウウツ ――茨木のり子異聞―― 』

木造モルタルカンカンアパートに住んでた頃、夜中だったか、早朝だったか、友達がぽつりと言ったのだ、「私あんなに芝居が好きじゃないもん」。「あんなに」のところにる・ばるのどなたかの名前が入り、それはもう大昔のことだけど、今回劇場に来て茨木のり…

池袋芸術劇場 『贋作 桜の森の満開の下  坂口安吾作品集より』

「芸術の神は嫉妬深い」天才画家は机にそう書いていたが、毎晩紅燈の巷に出掛け、早くに死んだ。 坂口安吾と矢田津世子は、背中にその芸術の神をおのおの背負ったまま向かい合い、恋愛は5年かけて1ミリくらいしか進展せずに終わった。安吾はいい作品をたく…

明治座 『劇団創立80周年 梅沢富美男劇団特別公演』

「プレバトのおじさん」とかおもっていてごめんなさい。梅沢富美男凄かった。 二枚目で踊るとき、美女で登場するとき、 (なんなのこの人なんなのこの人なんなのこの人)という言葉が頭をくるくる回り、ちょっと思考停止した。 あの脱力、っていうかリラック…

新橋演舞場 『オセロ―』

黒塗り?オセロー(中村芝翫)はムーア人で、一幕でさんざん見下されていて、二幕目、三幕目にそれが毒が回るように効いてくるというつくり。ということは、黒く塗らなくていいんじゃないの?一幕の蔑視が、とても鋭くよくできているし、なにより、オセロー…

彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール 『大塚直哉レクチャーコンサート J.S.バッハ⦅平均律クラヴィーア⦆の魅力 ~ポジティフ・オルガンvsチェンバロ その1~』

月~金朝6時からのNHKFM『古楽の楽しみ』を聴いてる以外、私とチェンバロの接点はない。 ――と、思っていたけど、よくよく思い返したら、一点だけありました。ホミリー(借り暮らしの)が、屋敷の客間のハープシコード(チェンバロのことね)のうしろの羽目…

ハイバイ15周年記念同時上演 『て』

「あれどうしたの、顔すっきりしているよ」昨日『夫婦』を見て帰宅すると、家族がそんなこと言ったのだ。すっきりしたーめっちゃすっきりした、自分の中の一部が成仏したみたいにすっきりした。今日はその前段、ばらばらになっている荒んだ家族が、もう一度…

ハイバイ15周年記念同時上演 『夫婦』

幸福な家庭は似通っているが、威張ってるお父さんというものは、もっと似通っている。 と、驚嘆の念でいっぱいになって家へ帰ってきた。どうしてあの人たちってローソクで勉強した街灯の下で勉強したって言いたがるのかしらねー。立派な仕事をしている/嫌な…

ブルーノート東京 矢野顕子トリオ featuring ウィル・リー&クリス・パーカー

オープントゥの靴を履いている女の人は、青山の街にも、ブルーノート東京にも、もうほとんどいない。8月下旬。秋だね。初めて一人で来たブルーノート、割といっぱいいっぱいです。 スタッフがピアノの前に譜(歌詞のようにも見えた)を置く。ピアノの中央の…

劇団青年座 第233回公演 『3組の夫婦による ぼたん雪が舞うとき』

原発から30㎞離れた町、地震で原発が壊れ、コンクリートの建物の中にいるようにという指示が出ている。夫(横堀悦夫)と妻(津田真澄)はほかに選択肢もないらしく、木造モルタル築30年の自宅の、いちばん奥まった子供部屋に避難する。夫は片耳が遠く、妻は…

渋谷クラブクアトロ 『FUJI ROCK AFTER PARTY ホットハウスフラワーズ special guest ウェスタン・キャラヴァン』

17年ぶりの来日。家族がよく聴いていて、それで私の分もチケットを取ってくれたわけだが、予習が足りなくてちょっとあおざめているのである。来たことあるって言われても全く覚えのない会場クラブクアトロ、真ん中にマイクが3本立ててあり、その両脇のスタン…

カクシンハンPOCKET08 『冬物語 ~現実と夢幻のデッド・ヒート~』

芝居を予約してチケットが郵送されてきた。チケットだけじゃない。「サイリウム」が入ってる。サイリウム=化学反応で蛍光色を発する器具の通称。psyllium。送られてきたのは片手を広げた長さのスティックであった。突然襲う黒い不安。①わすれる②時ならぬと…