読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

パルコ劇場「非常の人何ぞ非常に」

燃えない布を発明。うなぎを宣伝。日本で最初に洋画を描いた。日本の貿易不均衡を憂える。いろいろありすぎてどんな人だか知れないのである。平賀源内(1728~1778)。エレキテルを修理復元した人でもある。

これにたいして、杉田玄白は、オランダの医学書「ターヘルアナトミア」を長い歳月をかけて訳し、「解体新書」として世に出した蘭医である。一見、対照的によくわからない人とわかりやすい人だ。芝居を見てはじめて、この二人の間に交友関係があったのを知った。

 平賀源内(佐々木蔵之介)が足繁く通う蔭間茶屋。ここへ、源内を訪ねて杉田玄白岡本健一)がやってくる。源内は、ターヘルアナトミアの翻訳を後押しする。勇気づけられて、訳業に邁進する玄白。一方源内は、ぶっきらぼうで冷めている蔭間(小柳友)を芝居に世話したり、次作を瀬川菊之丞(篠井英介)に懇望されたり、絵の弟子小田野直武(奥田達士)を玄白に紹介したり、忙しい。ところが、玄白が「解体新書」を出版すると、段々に源内の状況が怪しくなる。蔭間をやめた佐吉と一緒に住み、金を使い込まれてもそれをとがめない。見かねた玄白が手を切るように佐吉を説得するのだが、「自分以外の人を大事に思ったことがない」者同士、源内と佐吉は通じ合うものがあるのだ。しかしこの関係が悲劇を運んでくる。

 玄白が撰した、源内の墓の碑文には、とても心情があふれている。マキノノゾミが聞き取りにくいのを承知で全文を玄白にかたらせるのも当然のような気がした。芝居の始まりとおわりが詰まっているのだ。最後に玄白の投げた球が打ち返される、その球がファールになるかヒットになるかはこのせりふ(?)にかかっている。玄白が、孤独だった天才の、確かに友達だったということが、あの中からも響いてくるからだ。