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マームとジプシー「cocoon」

 少女たちの夏服の、うすいローンで出来ているようなスクリーンいっぱいに、おもちゃの戦車が映し出されている。少女が通るとスカートが揺れ、スクリーンが揺れる。ふわりと戦車も揺れる。繭だ。

 舞台は四角く、一面砂に覆われている。三々五々、少女たちが舞台に現れる。

 cocoonと題されたこの芝居は、今日マチ子の描いた漫画を原作に持つ。太平洋戦争末期の沖縄戦で絶望的な戦況に巻き込まれて死んでいった女子学生たちを題材にしたもので、2010年8月に発表された。原作にも芝居にも共通しているのは、いま生きる少女の実感と、かつての戦争の実感とのつながりを呼び覚ますために、今も昔も変わらない、少女が自分を守る夢の「繭」を主題にしていることだ。

 舞台にはまず現代の少女サトコが登場し、学校生活のあれこれが、リフレインしながらスケッチされる。漫画の枠線のようなフレームが三つ並び、それ越しに、観客は少女たちを眺める。あるいは、フレームが裏返しになる。上手に、下手に、一列に並ぶ。枠線で切り取られた学校生活は続く。早口に、繰り返しを重ねる。見ているうちに息苦しさが襲った。保護されないところ、フレーミングされないところへ行きたい気がする。だが後半に入り、少女たちが壕(ガマ)に看護見習いとしているようになると、その息苦しさが効いてくる。彼らが舞台上をやみくもに走り、ぶつかり、恐怖が空間全部を支配するとき、逃げ場はないという気持ちになる。お話のフレームなどどこにもない。区切られた場所がない。守られていない。恐ろしいことが起きて、あの、うすいスクリーンが(繭が)振り落されてからも、舞台を走って行きつ戻りつする姿は、望まないまま波と戯れているようでもあり、どうしても呼吸をしてしまう身体を表しているようでもある。つらい夢を見た気がした。