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おちないリンゴ#11 『10978日目の鏡』

10978ひく閏年7、割る365=30、0575342。スマホの電卓初めて使った。『10978日目の鏡』。

 30才を迎えた主人公サトウユウコ(*)は不眠に悩まされている。姿を現した「眠り」(柳澤有毅)とセックスレスの夫婦のような会話を交わしたり、散らかった部屋の片づけにゲームの主人公のように立ち向かったり、脳内の自分と、二次元と三次元の恋人の違いについて話し合ったりして休日を過ごしている。これから、五年前に手ひどく振った青年(渋谷嵩博)との飲み会に出掛けようと、服を選びに選ぶユウコなのである。

 テンポよく、おもしろい。『マクベス』のくだりなどとてもよくできている。最初はくすくす笑っていたのだが、見終わってちょっとショックだった。前向きないい感じで話は幕を閉じる。しかしこの主人公を見舞う運命は、最近見た『私を離さないで』の苛酷さに負けない。明らかにされてしまう性衝動。予告された将来。耐えること、受け入れることを余儀なくされる感じ。それなのに男の語り手(北浦マサシ)が説教めいたことを言う。かわいそうだ。

 なにより、片づけられる、というエンディングなのに、散らかっている部屋(天井まで隙間なく連なる白い引出しに、カラフルに引っかかっている洋服の美しい色あい)がとても素敵だということがある。白い壁面収納に耐えながら、ユウコは生き抜けるのだろうか。心配。もっと自分の主人公にやさしくしてあげたらいいのに。役者は皆きっちり、まじめである。少し余裕が欲しい。

 30才ごろを思い出すと、30からの4,5年が、それなりにみんな一番きれいだったなという不謹慎な感想。ユウコ、がんばれ。(*海口ゆみ、木村佐都美、加藤記生、藤﨑あかね、由川悠紀子)

 

5月25日まで。