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ハイバイ 『おとこたち』

 大入り。当日券に長い列ができ、入れるかどうかわからない、とおもった。観られてよかった。

 上手側を覆う壁。四角をふたつ、段違いに置いたような舞台。その手前に散らかったソファセット。その「散らかり」には実は仕込まれた衣装や小道具がある。俳優たちが登場。俳優のひとり(菅原永二)がケータイを鳴らさないようになど諸注意をする。ここから芝居が始まっている。菅原永二がケータイについて語りながら、作中人物の山田に変わる。その山田が老人ホームのバイトについて語りながら、さらに変わっていく。リンゴの皮を切らずに一息でむききるところをイメージした。鮮やか。リンゴの皮が赤から青へ、あるいは青から赤へ、いつの間にか変わるようだった。

 24歳の山田は友人たちと風俗に行って、酒を飲む。鈴木(平原テツ)は製薬会社のサラリーマン、バイト生活だが結婚している森田(岡部たかし)、人気俳優の津川(用松亮)の四人の男たちだ。彼らの日常生活が、80歳までの長いスパンで描かれる。人生って生活なんだなあと思わされた。

 上手の壁には石垣のような模様がある。40代まで、壁は、真正面から見た石の上がり段に見える。それよりあとになると、降りてゆく果てしない俯瞰の石段だ。どちらの階段も、閉塞感があって、行き着く先が見えない。行く手は薄くらがりだ。そのくらがりは、女たちが登場するとき闇が深まるのだった。

 男の人生のバリエーションは増えた。しかし、山田の意識が混濁すると、男たちの人生はないまぜに一つに収れんしてゆくようである。パワーを持つこと、そこから降りること。それがどんなに難しいか、感傷的にならず、逃げもせず、岩井秀人は淡々と語る。最後に去ってゆく山田が飄々としているようにすら感じられたのである。