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映画 『イン・ザ・ヒーロー』

 赤身の肉とブロッコリ、唐沢寿明は撮影中、体を作るためにそればかり食べていたのだそうだ。

 街のショーウィンドーで、難しい色合わせの服、流行の先端の服を見ると、「カラサワくんの服だね」と呟く癖が、私にはあった。唐沢寿明は四肢が長く、腰が細く、顔が小さい。どんな服でも着こなせる。そんな「カラサワくん」が、今回、体を鍛えて身につけたのは、決して顔や名前が出ない人々の、戦隊ものの着ぐるみスーツだった。

 本城渉(唐沢寿明)は、子供向け戦隊もの『神龍戦士ドラゴンフォー』のスーツの中に入って戦う一員だ。体を痛めてもアクション俳優の夢を捨てない本城に愛想を尽かし、妻凜子(和久井映見)は娘(杉咲花)を連れ離婚してしまった。一人きりの部屋にブルース・リーのポスターを貼り、小さなアクションクラブで後輩たちの指導に当たる本城。そんな本城のもとに、新進俳優の一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)がやってくる。一ノ瀬とかかわるうちに、本城に、一世一代のアクションの機会が巡ってくるのだった。

 なんといっても唐沢寿明が、こんなにきれる身体を持っているというのが、一番の驚き。片足を蹴りあげると頭の近くまで高々と上がり、支える軸足は全くぶれず、続けて足を替えても同じようにあげることができる。そして全身を白い忍者の装束で包み、端座しているときの背中の美しさ。そのあとやってくる激しく果てしない立ちまわりをみると、この人は、ほんとうは、私たちの世代のうしなわれた時代劇スターだったのかもしれないと思わずにいられない。

 登場人物に意外性がなく、心の翳り、湿りが伝わりにくい。コミカルな感じで登場するマネージャーの門脇役の小出恵介が、とても生き生きしている。『王の男』のイ・ジュニク監督が、監督役で出ていて、リアリティがあった。