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俳優座創立70周年記念公演第4弾 『クレアモントホテルにて』

 アール・ヌーボー調のランプ、モンドリアン風に区切られた舞台セット。中には、毛糸をかごから、ポケットから取り出して各々の人生のように編み進む人々。

 クレアモントホテルは、セットの継ぎ目の仕上がり具合が、すこしでこぼこして「惜しい」感じに作られていることからわかるように、それほど上等のホテルではない。そこそこ裕福な老人たちが、健康である間、長期滞在を許される、そんなホテルだ。

 パルフリー夫人(青山眉子)はこのホテルでは新参者で、孫が顔を見せないのにやきもきしている。ある日、散歩の途中で足をくじいてしまった夫人は、ハンサムな青年ルド(松崎建ん語)に助けられる。夫人と作家志望のルドは、祖母と孫という名目を借りて、親しくなってゆくのだった。

 「ああっ」「どうしました」「ちょっと足を...」という一連のシーンを映画の予告篇で見て、すこし辟易していたのである。あり得ない。都合よすぎ。しかし、芝居は違っていた。背景に同宿のアーバスノット夫人(片山真由美)が、厳然と存在しているからだ。素敵な孫がついにパルフリーを訪れたと知って、まっくろに打ちしおれるその絶望の深さ。孤独。病。痛み。忍び寄る老い。不在になってからは一層、クレアモントに立ちこめる死というもの。優しいおばあさんとしか見えなかったパルフリーを、ヒロインたらしめるのは、「憂鬱にならないように決心している」姿、ひたひたと迫る運命に敢然と、我慢強く立ち向かうその態度だ。「若い」青年と老婦人のかすかな、見えないくらいの恋なのに、最後を老ルド(小笠原良知)が締めるところが、私にはわかりにくかった。デズモンド(田中真之)がもうけ役。もっと儲けていい。客入れのスタッフがハンサムぞろいで、帰りに足くじいちゃおうかと思いました。