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『思い出のマーニー』

 泣く。この映画を見て、もちろん私は泣いたのだ。ラスト近く、『アルハンブラ宮殿の思い出』が聴こえるシーンで。

 でもさ、泣いたからって、好きな映画なのか。

 12歳の佐々木杏奈(声:高月彩良)は、喘息もちで、心に屈託がある。大きくなるにつれ、段々に表情が消え、周囲になじめないでいる杏奈。心配した養母の「おばちゃん」(声:松嶋菜々子)は、美しい入江のある町に杏奈を送り出す。

 入江のはずれに、「湿っ地屋敷」という名で知られる古い邸宅があった。ある日、その二階の窓に、長い金髪を誰かに梳かれている少女の姿を杏奈は見る。

 それが「マーニー」と杏奈の出会いだった。金髪の美しい少女マーニー(声:有村架純)と、杏奈は互いに大切な存在となってゆく。

 申し分のない筋立てだ。少女の深い鬱屈、愛するものを得た喜び、誤解、赦し、成長。けどなんだか納得いかないなー。

 作務衣だと思う。杏奈を預かってくれる大岩夫婦の夫(声:寺島進)が、頭を手ぬぐい様のもので覆い、作務衣を着ている。作務衣はいろんなことを物語る。すこし自由な生き方。すこし個性的。すこし型に嵌ってる。説明的すぎる。かっこ悪い記号だよ。

 そんなもの着せるより、もっと大事なシーンがあるんじゃないの。町に着いた杏奈を大岩夫婦が車に乗せる。車が揺れ、積んであったかぼちゃが杏奈の膝の上に落ちる。このシーン、まるで実写みたい。アニメーションの弾みが感じられない。車の中も荷物でいっぱいに見えない。まだ修繕してないのかあの道は、と大岩さんが言うけど、これって大岩さんを全て表わしてしまえるくらいのセリフなのに、できない。誇張がないのね。真面目ね。と、文句言いながら、目を赤くして、映画館を後にするのであった。