演劇集団円 女流劇作家書下ろしシリーズその2 『朽ちるまにまに』

 20才若返ったらどうしよっかなー。      

「..................。」

 頭が白紙。えーと映画行ったり、お芝居観たり、洋服買ったりお茶したり。じゃあ今となんら変わらん。

 この芝居の登場人物たちの場合は微妙。70歳のはずなのに、南米奥地から帰ってきたら、50歳前に変貌しているのだ。華道の先生千登勢(中條サエ子)は恋愛に突っ走り、子供と暮らす百恵(磯西真喜)は自分を主張する力を得る。しかし夫を亡くして一人食堂を切り盛りする一子(平栗あつみ)は眠くなるばかり。一子のほんとうの願いとは、なんだったのか。

――あんたは不思議な花だねえ。散るくらいなら、咲かずに朽ちるほうがよかったのか。

 喜劇的に展開する錯綜した人間関係、それを縫って発せられるこの美しいセリフには力がある。あやしい南米ガイドのフジオ(吉見一豊)がこのセリフを発するまでの一子との緊迫したやり取りも、重くならず、巧い。笑える物語によく調和している。

 百恵の長男(石井英明)、次男(佐藤銀平)、医師十川(瑞木健太郎)など、男たちはみなキャラクターがはっきりしていてとても愛せる。それに対して三人の女主人公は立場が強調され、情報が多いのに、人格がいまいち伝わらない。特に一子は「不思議な花」である描写がすくなくさびしい。フジオに変な説得力がある。「顧客にキャンピングカーをもらった」というのも、すぐ納得できる。百恵が小宮山(清田智彦)に、そっぽを向くシーンで笑えてほっとした。あそこで子供をよろしくなんていう芝居は、優等生過ぎて耐えられないもんね。