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カムカムミニキーナ 劇団旗揚げ25周年記念公演『スワン・ダイブ』 

 諏訪、いったことがある。凍りついてる諏訪湖も見たことあるし、白鳥型の遊覧船にも乗った。名物の羊羹も食べたし温泉にも浸かった。当然ガイドブックの類も読んでいるわけだが、この芝居のパンフレットの「スワン・ダイブ取材記」はもの凄くよくできていた。これを読んでから諏訪に行けばよかったなあと思うくらいである。

 諏訪には、新しい神様と古い神様の境目がある。大国主命の国譲りに異議を唱えた神様が諏訪のあたりまで追われるという記述が『古事記』にでてくる。古い神様はイケニエを要求する。稲作以前の採集生活と、製鉄の歴史が絡んでいるらしい。諏訪の一族を滅ぼした武田信玄や謎の錬金術師(村岡希美)が現れる。正直言う。つかみきれなかった。情報量が膨大なのだ。『古事記』には、なんとなく、「あれ、そこつながる?」という断絶というか切断面を感じることがあるが、この芝居も、いろんな要素が、『古事記』っぽく一つの袋にぎゅっと詰められている。 

 大阪の動物園から一羽の白鳥が逃げる。それを追って、口のきけない娘(未来)とその母(明星真由美)は出雲へ、ひとり、またひとりとイケニエを作りながら旅をする。白鳥の飛ぶ下に新しい鉱脈があると信じて移動する鉱脈堀の一族。「武田金属」社長(松村武)に疎まれる先妻の長男ヤマトタケル武田航平)。

男の子がひとりで、「きゃー。がっしゃーん。」と言いながら人形遊びしているのを見る味わいだ。言葉数が多い。誰にもまったく口を挟ませない。観客に考える余裕を与えない。パンフレットを読めば、とてもよく調べてあることがわかる。だけどすきまがほしい。

 最終シーン、湖を垂直に沈んでゆく少女と、その真上を高く飛ぶ白い鳥を一息に思い浮かべる余地が欲しいのだった。