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オーチャードホール ボズ・スキャッグス

 ボズ・スキャッグスの特集本買っちゃった。

 表紙に、「50年の歴史を紐解く」と書いてある。50年。夭折したドゥウェイン・オールマンとアルバム出してると思うと昔の人だけど、自分自身高校生の頃聴いていたと思えば最近だ。

 あの頃は「AOR」って言葉も知らなかった。「田舎で聴く幻想の都会の音楽」だったなあ。例えて言うなら、夜のドライブみたいな。目の前に車のメーターパネルがくっきりしているほかは暗い。いい車の低いエンジン音と、すこし雨。もちろん窓の外はバス停の立つおんぼろの国道ではなく、タイヤが吸いつくような舗装の道に、次々に現れては過ぎてゆく高層ビル。「わあ!」っていいたいけどいわない。そこをこらえて何気なく見る、大人の景色じゃないといけないのだ。ま、そんなこんなで私も都会へ出、ボズ・スキャッグスのジャズのカバーとか新しいアルバムなど聴いて、こうしてオーチャードホールに来た。

 ボズ・スキャッグスの歌には手触りがある。粗い麻のクロス、その上に置かれた飾り気のないコーヒーのカップ。きもちよく焼けたトーストにバターを塗るときの、かすかな凹凸。コーラスをつけるミス・モネットとの掛け合いは素晴らしかった。バンドの人は小さいサックス(ソプラノサックス?)から大きなサックス(バリトンサックス?)に次々持ち替えて、音色を変化させる。細かく手触りを変えてゆくのだ。途中にいくつか、AORがはさみこまれる。「ざらざら」の合間に「つるつる」がある。最後の曲Last Tango on 16 th Street は、ボーカルが蔓のように空間をかこってゆく感じ。天蓋の中に閉じ込められる。AORもいいけど、最新アルバム『A Fool to Care』 みたいな手触りの歌がもっと聴きたい。あ、アルバム聴いてればいいのか。