シネ・リーブル池袋 ナショナルシアターライブ『ザ・オーディエンス』

 じーっとみる。女王(ヘレン・ミレン)が歴代首相をみつづける芝居。週に一回、続けられる女王と首相の慣例の謁見(オーディエンス)。女王に政策の決定権はない。決められた何もかもを黙ってみているしかない。スエズ侵攻に胸を痛め、ブリタニア号の退役話にいろをなし、強いものや利権に味方するサッチャー(Haydn Gwynne、読みがわかりません)に批判的な女王は、一人の観客(オーディエンス)なのだ。「たいていの首相が幼少期を不安定に過ごし、愛情と権力を強く求めている、だから私は彼らに安定を与えるの」見守ってもいたのね。

 だけど、世界にたった一人の女王はまた、首相たちから物珍しげにじーっとみられる人でもある。今度は首相が観客だ。

 するとだんだん、この芝居の中では、いつも誰かが誰かを、じーっとみていることに気づく。子供時代の女王(ネル・ウィリアムズ)は大人になった女王をみ、大人になった女王は子供時代を覗き込み、召使たちは主人をみる。まるで鏡で照らしあうように、みなが互いの目の中をみ返し、気配を聴いている。

 メージャー(知ってる。サッチャーの次の人=ポール・リッター)、チャーチル(知ってる。有名。=エドワード・フォックス)、サッチャー(知ってる。鉄の女ですね)のキャラしかしらないし、政権がどうなったかなんてこともわからない。わからなさすぎる。それでも十分面白いけどね。

 最初に出てきた女王をみて、ヘレン・ミレン、ものすごくおばあさんになっちゃったなあと軽くショックを受けるのだが、そのあとの展開が鮮やかで素敵だった。

 歴代の首相と女王が写真のように並び、舞台奥からこちらをみている。その目の中には、本物の観客も映っているのだ。