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彩の国シェークスピア・シリーズ 第31弾 『ヴェローナの二紳士』

ヴェローナの二紳士』、初めてだ。シェークスピアの芝居には、「いい者」も「悪者」も、多種多様の幅、深さで登場するけれど、この芝居では、その原型のようなキャラクターが現れる。

 まだ、善悪共に分かちがたい、未分化で未熟な誰か。長所も短所も取り混ぜて、棚にぎっしり詰まっていて、取り出してみもしていないような、自分も知らない自分、グランド・ツァーに出て、初めて出会う自分。それを陳列されて対面する。愉快で不愉快な何か。そんな感じ。

 ヴェローナの裕福な青年ヴァレンタイン(高橋光臣)とプローティアス(三浦涼介)は親友だ。プローティアスはジュリア(溝端淳平)という恋人がいるため、遠国ミラノに出てゆくヴァレンタインをうらやましがらない。ところが、突然プローティアスもミラノへ行くことになる。愛を誓い、別れを惜しむジュリアとプローティアス。

 ここで大変なことが起きる。ミラノの大公の娘シルヴィア(月川悠貴)を、ヴァレンタインとプローティアスが、どちらも好きになってしまうのだ。この展開には、ほんとにびっくりした。中でもプローティアスの心変わりっぷりが目覚ましい。でもさ、こんなことたくさんあったのかもしれない。イギリスの古謡とか、不実な恋人をなじる歌でいっぱいだもんねー。そして、それにびっくりするのは他人じゃなく、裏切った本人だったりするのだ。

 この芝居は月川悠貴と溝端淳平に尽きる。シルヴィアの月川悠貴の、辺りを払う気品(カーテンコールで挨拶して去る時、彼女のために道を開ける人々の群れが見えるようだった)、一幕では少し硬かったジュリアが、声も作らないのに可憐な少女の演じる少年になりおおせる二幕。楽しく見た。