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赤坂ACTシアター 笑福亭鶴瓶落語会

 鶴瓶、本気だ。この落語会が二時間を超えると聞いて、すぐにそう思った。だけど、鶴瓶というひとは、大体常に本気みたいなのだ。テレビで、「これはテレビですから」ととりつくろおうとする素人の出演者に向かって、それこそ怒髪天を衝く勢いで鶴瓶が激怒していたのを思い出す。テレビがとりつくろわれるものだとしたら、それを本気でやっている自分の本気は、ニセモノになってしまうではないか。というような怒りだったと思うなーいまかんがえると。

 最初の演目は「鶴瓶噺」。取り留めもなく話をしているように見えて、笑いどころがたくさんある。開演時間ぴったりに飛び出してきて、普段着でさっと始める。式根島の映画会のはなしでとてもわらった。すっとひっこむと、ヘルシンキの落語会の模様が場内に流れる。着物の鶴瓶の登場だ。「青木先生」。70代の高校の国語担当青木先生と、高校生との授業風景。この話は昔、鶴瓶の思い出話としてテレビで聴いたことがあったが、それより格段に進歩していた。なにより、青木先生の現代詩の授業が、実際に進捗していくというところに驚く。もすこしこまかくてもいい。名品。こういうのをマスターピースというのではないだろうか。つづいて「粗忽長屋」、古典だけど現代の不条理な笑いに通じる作品。それから舞台セットを少し変えて、「山名屋浦里」。ぱっとしない留守居役と当代一の花魁浦里との実話だ。留守居役酒井の沈黙の深さに、鶴瓶の本気を感じる。浦里の登場がもう少し鮮やかだったらなあ。「甘やかな」という形容が、鶴瓶のキャラクターから浮いているのだが、「青木先生」のように大胆に、もっと自分に引き付けて演じてもいいのかもしれない。たっぷりやれるはずの見せ場がたくさんある。とにかく今日の落語会は「青木先生」、市井の人青木先生が、鶴瓶の描写で不滅になっているのを、凄いと思った。