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ピーター・バラカンのPing-Pong DJ Special ブルース篇

 思い出そうとしている。学校ハモニカの感触と、音色だ。上下2段になっていて、吹き口が青い。両側から3本指で、つまむように持つ。ただ吸ったり吐いたりするだけだと、濁った音がするんだよね。「げーこー」って感じ。意味なくげこげこやりながらふざけていると、肺の奥が吹きすぎでじーんとしてくる。

 今日はブルース(ブルーズ)、何の前置きもなく始まる。オーティス・ラッシュ。当然でしょって感じ、その扱いでブルースの有名な人とわかる。バラカンさんと交互に曲を選ぶのは「モンスター大陸」のブルースハープ奏者千賀太郎だ。ハモニカの人ね。好きな音楽を語れることで顔が輝いている。カシアスクレイとかいた赤いキャップにTシャツ。感じのいい若い人だ。ただ、髪の色は鮮やかなショッキングブルー。シカゴ・ブルースにはサウスサイドとウェストサイドの二つの流れがある、というんだけど、かかる曲がみなブルースハープ。ジュニア・ウェルズ、リトル・ウォルター。ブルースハープってさ、なんか、森の貯水池みたいな、知ってる人だけが知ってる存在かとおもっていたら、違った。立派な山脈。ミシシッピサクソフォンと呼ばれることもあるらしい。ハモニカじゃない。かっこいい。

 「モンスター大陸」のふたり、千賀太郎と藤倉嗣久が、ブルースをやってくれる。ギターのフレットボードの上を細かく、縦横無尽に動く指、その微妙に上がる音を追いかけて、ブルースハープが鳴る。共鳴の仕方を変えるために、手の中で隠れたり現れたりする光る楽器。ふくらんだりしぼられたりしながら途切れず鳴り続ける音、ブルーズの音、千賀太郎の胸板の厚さも納得の鮮烈な音だ。リハーサルを観たバラカンさんが、冒頭「(演奏の)前座です」といった意味が分かった。素晴らしい演奏だった。