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吉祥寺オデオン 『夏の夜の夢』

 ほそながい舞台に置かれたベッド、人間が一人(=パック キャサリン・ハンター)そっと横たわる。頭をつけ、眠りに落ちた途端、四隅のシーツがするするとどこまでも広がり、天幕のような広さとなり、舞台を覆い、眠る人を包んで上へ上へと上がっていく。風をはらんで膨らむシーツ。ベッドの下には森の木々。誰かがそれをチェーンソーで伐ったので、重力から解き放たれて、夢は自在に動き始めたのだ。シーツ(天幕)の切れ目から蜘蛛のように降りてくるパック。それは誕生のイメージにも見える。

 世界はいろんなものに例えられるけど、ここではベッド。生まれたり死んだり、愛し合ったり夢を見たり、思えばベッドの上で人生の大半のことが起きるのだった。

 キャサリン・ハンターのパックが素晴らしくて目が離せない。冒頭ベッドの上で急に脱力(それは眠ったことを表わしている)する手足の愛嬌、ゆがんだ衣装の中から不意に湧き起こる素早い動き、後ろに回される曲がった腕、極めつけは泣きながら現れたのに実は笑っているいたずらっぽい表情、野田秀樹が芝居に出てほしくなるのがよーくわかる。同類だ。身体がよく訓練され、着地した場所から順に(それが肩であろうが足であろうが)しなやかに動かすことができるようだった。

 四人の恋人たちは森の中で、混乱状態に陥ると、衣装を剥がしあい、脱ぎ合う。考えると変な気もするのだが、怒りと混乱と本音が現れる。ハーミアの衣裳が脱げ落ちて、下着が露わになったとき、それは扇情的であることからとても遠く、あくまでも衣裳で、よく似合っていた。素直に受け取れる感じよさだったのである。なぜかほっとした。彼女がこれと違う下着の女だったら、夏の夜の夢はまた別のものになってしまうだろうなあ。と思ったのだった。