集英社インターナショナル ピーター・バラカン『ロックの英詞を読む――世界を変える歌』

 英語を読んだり聴いたりした私ってさー、まるで

   砂地に水がしみこんだあとの砂。

 通過して、大半はどっかいっちゃう。はいはい。ざんねんさ。

 そういう投げやりな気持ちでいたら、洋楽の歌詞を、ピーター・バラカンがまとめた本が出た。洋楽聴くから買いました。

 22曲のメッセージソングとその詳しい解説付き。そして、どの曲も、you tubeで聴ける。凄い世の中だね。

 一番驚いたのは一曲目。サム・クックのA Change Is Gonna Come。映画音楽のようなストリングスの後に続くちょっと掠れた高音の男声、Iwas born by the river○と、すばやい、はっきりしたブレス、そして、in a little tent/Oh and just like the river…と、声量いっぱいの、川(ミシシピ川)が見えるようなゆったりしたうたい方。有名だよね、この曲。どんな人も、一回は聴いたことがあるくらいな曲だ。サム・クックの歌って、草臥れた日の夜、ソファで体を伸ばしながら聴くって感じだったけど、これから必ず変化が起きる、起きるはずだっていう、黒人の自分に加えられる理不尽とそこからの脱却を願う歌だったんだね。この本には英詞とその解説と訳、英語独特の表現の説明、サム・クックがどんな人だったか(はっきりした権利意識の持ち主で、搾取される側であることをやめ、自分のレーベルを立ち上げた)が載っている。ベスト盤の紹介もある。中身が脳を通過蒸発しない、歩留まりがいいよ。サム・クックは33歳で、「不可解な死」を遂げたそうだ。

 この他にジョン・レノンの「労働者階級の英雄」、ビリー・ホリディ「奇妙な果実」、ピーター・ゲイブリエル「ビコ」など、どれも怒りや悲しみに満ち、世の中を動かしてきた歌だ。CSNYの「オハイオ」とか、解説読んで歌詞を追いながら聴くと、怒りの稲光が見えそうでした。ていうか怒りを追体験した。これからは何とか、ちゃんと歌詞カード読もう。と、脳の砂に誓うのだった。