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子供のためのシェイクスピアカンパニー 『オセロー』

 『オセロー』、かわいそうで読むの辛。

 っていつも思うんだけど、観に来ちゃったなあ。席に着くと、遠く潮騒。大小5個の照明が客席の方を向いている。目がくらんで舞台がよく見えない。まるで嫉妬に取りつかれた人みたい。机がいくつか島のように寄せておいてある。寄り添うように椅子もある。

 開演前に、黄色いヘルメットをつけた俳優たちが出てきて、歌を歌う。スガシカオ。この時、客として、どうチューニングすればいいのかわからなかった。みな、『オセロー』の登場人物らしく、暗い感じだし。

  お気をつけなさい、嫉妬という緑色の目をした怪物に

 暗がりがオセロー(河内大和)にささやく。「そのためだ、そのためなのだ」。イアーゴー(山崎清介)が妻デズデモーナ(大井川皐月)に対する疑いを吹き込もうとしても、一笑に付していたオセローが、イアーゴーの巧みな誘導で次第に変化する。オセローは、叫び、怒り、呪う。自然に震えてしまう、手紙を持つ手。汗とも涙ともつかないものが、顔を濡らす。ハンカチのことを知り、動かぬ証拠を手に入れたと信じるオセローの激しい嫉妬が、――たとえば紙が焼け焦げながら身をよじるように――全身に伝わり、彼を何か異形の者、怪物に変える。もう少し内面の変化がよく解るといいけど、河内大和フルレンジの熱演。

 イアーゴーはなぜここまでオセローを追い込み、破滅させるのか。イアーゴーの言い分、シェイクスピアの説明だけではよく解らないと感じたりするのだが、今日は腑に落ちた。登場してからこっち、オセローが死ぬまで、彼は実は、もう一人の「緑色の目をした怪物」だったのである。