池袋芸術劇場 『マイ・フェア・レディ』

○「やあ君は...。」ピッカリング大佐(田山涼成)が驚いて声をかけると、貧しいなりに精いっぱいお洒落したイライザ(霧矢大夢)は(来たよ)というすこしいたずらっぽい、ピッカリング大佐にだけ心を開いた顔をする。こことてもチャーミングでいい。最後になぜ大佐が、学校以来つきあいもなかった内務省の友人に電話をかけて、イライザを探すのかがよく解る。

○Wouldn’t It Be Loverly? 『だったらいいな』をイライザが歌う時、スラムの行商人たちのコーラスがきれいで、何もこの街を出なくても、ここにだって少しはいいことあるかもという気持ちにさせられる。

○イライザの父アルフレッド(松尾貴史)はいつも酔っぱらっていてぐだぐだみたいにみえるけれど、きちんと理知的に役作りされていて、山場がイライザに背を向けたまま手を振るところ、娘と別れる辛いような、うしろめたいような表情の所に来る。ひどい親だけど憎めない感じである。

○Just You Wait 『みてろシギンズ』を歌う前、ヒギンズ教授(寺脇康文)があんまり厳しくないので、イライザが歌いにくくなっていると思う。

○ヒギンズ教授が女はなぜ男じゃないと歌うとなんか可笑しく、ちょっとバカだけど愛嬌がある。現代ではそういう風にしか演じようがないのかもしれない。

○客席場内には ごめんなさい お気をつけて おそれいりますの言葉が飛び交い、往年の映画ファンが多く詰めかけているようだった。大きく改変できないだろうな。だが、何か新しい解釈が、あってもよかったと思う。