ブルーノート東京 パンチ・ブラザーズ

Punch Brothers というのは、マーク・トウェインの短編から採った名前だっていうから、読んでみました。

 “Punch,Brothers,Punch” (1876)新聞に載っていた、もともとは鉄道の広告の、「(切符に)穴をあけて、皆さん、穴をあけて」という調子のいい歌が、耳について離れなくなった主人公(トウェイン)が、それを友人に「うつす」ことで解放される。でも今度は友人が歌に取りつかれ、頭の中を占領されて大変なことになる、という話。面白いけど、ありそうでこわい。パンチ・ブラザーズの曲にも、とりつかれそうなフレーズがたくさんある。

 パンチ・ブラザーズが登場。5人。下手から、フィドル、ギター、ベース、マンドリンバンジョーの順で並ぶ。びっくりしたのはマイクが真ん中に一本きりだということだ。5人で一つ。みんなすごーく近くに立つの。ソロを弾き終わったら、少しさがる。でも基本的に、マイクを囲んで半円になっている。

 まずマンドリンのクリス・シーリーが進み出る。マイクの上にかぶさるようにして、半音の難しい節を歌う。伴奏なし。Between 1st and Aだ。息を詰めるようにしてシーリーの声を聴いていた楽器が追いかけて大きく鳴る。ここ頭の中で何度もリピートしちゃうフレーズだ。クレッシェンド、ディクレッシェンドが鮮やかで、すごい勢いで弦がはじかれ、ひかれ、その隙間の沈黙も一糸乱れない。「間奏」っていうけど、「間奏」じゃない。楽器のヴォーカルだ。5人で一つの楽器みたい。ピック(?)ではじく音の一音一音が、滴ってくる透明の、ミントの透けるジュレップみたい。5人が同時に同じ節に取りつかれてる。弦のねじを締める音、弦を滑る音、いろんな音を音楽に勘定しようとしているのを感じる。元はブルーグラスだというのが、遥かに遥かに感じられる、まるで遠くから来た旅人のような音楽だった。