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黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ第30弾記念公演 『レティスとラベッジ』

 巻き肩で悩んでる。胸を張りながら頭を反らすといいよ、朝起きたら窓枠に手をひっかけて胸筋を伸ばすといいよ、背骨の周りに肩を巻きつけるんだよ。いろんな人がいろんなことを言う、だけどさ、これ、もしかしたら加齢のせいじゃないのか。

 「わー」。声を出さずに心の中でびっくりする。黒柳徹子、セリフ全然云えてないじゃん。シフォンや、オーガンジーの光に映えるドレスを着て、美しく頬杖をついたり、年上の大俳優に「それでどうなすったんですか?」と、ほのかにコケティッシュな笑顔を向けていたころから覚えている世代である。

 ひやひやしながら芝居は進む。古い邸宅のガイドとして、レティス黒柳徹子)は、大した出来事も起きなかったつまらないお屋敷の過去に、階段に立つ女王を登場させ、それは「真珠」のドレスの女王から「ダイヤモンド」の女王にエスカレートしてゆく。聴いているうちに、よくぞこれだけ覚えたと思う。うちの家族と同い年だよ。それも、文字通り記憶しているのではない、大体の意味とそこに乗る役の感情を把握しているのだ。つまり、「役」を生きている。二幕、弁護士バードルフ(団時朗)と話しているとき、黒柳徹子は舞台中央の何もない所でつまずきそうになった。アクシデントだと思うけど(ちがう?)、彼女は(黒柳徹子は――レティスは――)、どうしてつまずいたのかしらとセリフの間に床をしげしげと見るという芝居に変えてしまっていた。レティスとして生きているから、あとでさっき忘れていたセリフを足すこともできる。

 黒柳徹子は、これ以上1ミリも滑舌が悪くならないよう、1ミリでもよくなるよう、努力すべきだ。「役を生きている」、役として呼吸している人というのは、なかなか見られない存在なのだから。そうでないともう芝居が成立しない。私も「巻き肩」がんばるわ。