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パルコプロデュース 『キャバレー』

 長澤まさみ、美しい。美しくてびっくりだ。自分が美しいとも知らず、無心に咲いてる花のようなのだ。体全体から、本人も予期しないような優美さが漂っている。こないだまで「きりちゃん」で、日本中のツイッターが「きりちゃんよかったむくわれて」と沸き返ったばっかりなのに、今日はこうして、白い肩を私たちに見せて、歌い、かつ踊っているのである。たくさんのナンバーを歌うが、どれも歌えていて、踊りもできてて、無邪気な感じがする。でもさー、このミュージカル、一番大事なのは「キャバレー」というナンバーじゃないの。「キャバレー」さえ花火のように爆発してくれれば、あとのナンバーは少々とちったって、構わないくらいだ。他は「ため」で「助走」だと思う。がんばろう。

 「花のような無心」を保存したいような気もするけど、美しさを、骨の一本一本まで、尺骨茎状突起から、末節骨まで、「見せる」って気持ちが大切です。

 長澤まさみが演じるのは、ベルリンのキャバレー「キットカットクラブ」の歌手サリー・ボウルズ。アメリカ人の小説家志望の青年クリフォード・ブラッドショー小池徹平)と恋をする。クリフォードの家主のミス・シュナイダー(秋山菜津子)は間借人の果物屋ミスター・シュルツ(小松和重)と仲良くなる。しかし時局はナチスの政権前夜、その薄暗い不気味さが、次第に人々を浸していく。

 ナチスの登場は、衝撃というより既視感のようなものを感じさせ、ファシズム下で人は、別人になるのではなく、ほんの少し温度が変わるのだと思い、その微妙さがとても恐ろしい。小池徹平の「ぱっとした」という歌いだしがきれいで素敵で、石丸幹二の「どうせ拾った恋でしょう」というフレーズがとても耳に残った。サックスちょこっと歌わせすぎだよ。