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世田谷パブリックシアター 『幸福な職場 ~ここにはしあわせがつまっている~』

 いい話なの。チョークを作っている会社が、養護学校の先生のたっての頼みでしぶしぶ知的障碍者を受け入れ、次第にその出会いで変わってゆく。実話だ。

 出てくる俳優はみんなハンサムだし、笑わせる間合いもすごく巧いし、壁にかかった湖かなんかの絵を、へぇーと覗き込む感じで観る。知的障碍者のことなんて、考えたことなかった、それはたとえば、駅には一か所、線路の向こう側にしかエレベーターがないのだということに、足をくじくまで気づかずにいるのと似ている。弱者の立場になるまで、この世界が弱者にどれほど不親切か、わからないのだった。ところが、障碍者が就職できず、子どもを持つことも許されなかったという事実は、私たちにもちゃんとつながっている。ほら、「産めとか産むなとか、自分のことを他人に言われたくない」って思うでしょ、あの気持ちを敷衍していくと、「障碍者の人は産めとか産むなとか、ずーっと指図されていた」ってところに行きつくんだよね。「絵」のなかの「おはなし」だったものが、ひたひたと観ている私の足元に押し寄せる感じ。

 観に来ているのは大体が若い女の人、静かに並んでキャストの写真やグッズを買っている。安西慎太郎のきれいに整えられた眉を見ると、私がいつも観ている芝居、こんなのが芝居だと思い込んでいるのとは違う芝居なのかもしれない、とちらっと思うけど、彼の大森泰弘は、正調二枚目主役の芝居で、陰翳に乏しい。それを支える工場の原田(松田凌)と久我(谷口賢志)も、どちらかと言えば二枚目の芝居なのだった。最初の通産省の役人の場面が、そのあとどうつながるのか、しばらくわからなかったよ。馬渕英里何の佐々木先生、幅いっぱいきっちり芝居しているが、逸脱が欲しい。「味」です。