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シス・カンパニー公演 『死の舞踏』

 コミック地獄図絵。

 途中、いや、序盤、観ながらちょっと怒っているのである。

 コミックなのかー。

 そんな気持ち。スウェーデンの島にある要塞に、軍人エドガー(池田成志)は妻アリス(神野三鈴)とともに住んでいる。島のお歴々とはうまくやれないため、人付き合いは全くない。エドガーとアリスが、渾身の力を込めて憎み合っているのが、アリスの従弟クルト(音尾琢真)の訪問によって、明らかになっていく。

 池田成志はこの役の描線に、ほんのすこし、まんがの線を入れる。日本の劇画のような感じじゃなく、現実がいつのまにか、フランス漫画みたいな一面しっかり描きこまれたリアルなそれとなり、そしてその端に地続きに単純な線がかすかに入り込む。まんがであり戯画でありスーパーリアリズムである生活、お笑い草でありながら途方もなく深刻な生活、死におびえるエドガーも、夫を憎むアリスも、手玉に取られるクルトも、単調な生活や子供や家族から疎外された暮らしに耐え、憎みあい、来る日も来る日も頁をめくり続けるしかない。

 神野三鈴は「自分(リアル)」の上にかっちり役作りしていて、ぶれがない。音尾琢真は縦横無尽に翻弄され、本分を尽くしている。池田成志の発声が聞き取りにくいこと、つくりだすコミックが多少浮き気味であることが、問題点である。このコミックがもう少しうまくいけば、たとえば映画『セッション』で最後にJ・K・シモンズが真顔で喋り出した時の、行く手の道がぐにゃっとゆがみそうな怖さに届くと思う。

 最初のがっかりは消えて、面白かったと思って家に帰った。