Blue Note tokyo 『JAZZ FOR CHILDREN チャイナ・モーゼス』

 子どもの日。路地や駅頭で、朝から、ものすごくハイテンションな子どもたちのきゃあきゃあ声が聞こえる。今日は子どもが主役だもんね。ブルーノート東京では、「JAZZ FOR CHILDREN」と題して、お昼の三時半からChina Mosesのショーが開催されました。

 次々に現れるお父さんやお母さんに連れられた子供たち。外国の子、日本の子、車椅子の子もいる。来たことのない大人の雰囲気のブルーノートに、みんなややしゃっちょこばってる。

 チャイナ・モーゼスは、ディー・ディー・ブリッジウォーターという有名なジャズ歌手と、テレビドラマ『ルーツ』(黒人作家アーサー・ヘイリーが、自分の出自を追う物語。闘鶏で自由を勝ち取ろうとした男の人の声涙下る演技など、今も忘れられません)の監督ギルバート・モーゼスの娘さんだ。明るい人かな?それとも屈折したお嬢さんか?

 登場したチャイナ・モーゼスは白に大胆な赤や緑の柄のサックドレス、セルフィースティックをかざし、「わーい」みたいな、ものすごい明るい感じ。この登場シーンだけで、彼女が誰の娘でもなく、ただ彼女自身なのだということがわかる。

 バンドの奏でるSomeday My Prince Will Comeに続いて(敢えて音を膨らまさないサックス、ブラシの柄でシンバルをたたくドラムス、鋭い溝に音を嵌めこんでいくようなピアノ、よく鳴るベース、シンバルの上のチェーンが、光る蛇みたいに身をよじっている)、Jamming At Homeという歌を歌い始める。最初の盛り上がりの、いちばん聞かせどころのフレーズを、チャイナ・モーゼスは惜しげもなく前列の小さい男の子に向かって歌う。瞠目の伸びる声。子どもは目を真ん丸にして、「僕に歌ってくれたよ!」みたいなことを周り中に言っていた。いいなあ。素敵な思い出だね。

 次はジャングルブックの中の猿が歌う曲、I Wanna Be Like You。「Walk Like You,Talk Like You,」ってところがとってもキュートだ。それから「指を鳴らしてね」といわれて、子どもも大人も指を鳴らしたWatch Out、自動で動くライトに気を取られる子ども、指を真面目に鳴らしている子ども、そのテンポはあってたり、ややあってなかったり。すごいピアノソロが聞こえる。お父さんの膝の上で跳ねている女の子。

 サックスのフレーズを観客が復唱する(コール&レスポンス?)場面もあった。最初は簡単、最後は子どもにも大人にもすごく難しかったのだが、サックスがどれだけ歯切れよく、どれだけ難しいフレーズを演奏しているかよく解った。

 Disconnectedという曲は、ソーシャルメディアについて歌ったもの、テレビを切ってゲームもやめて、おたがいにじかんをすごすのは大切ですよね。私はフェースブックツイッターもインスタグラムもやってるんだけれどね。すこしハスキーな、少女っぽくも聞こえる声で歌い始める。アイパッドの楽器に自分の声が読み込んであり、触れると、Dis-connect-edとコーラスする。使いこなしてるなあ。若いんだね。

 私が好きだったのはRunningという曲、壁があっても突っ走ってしまう自分の性向を歌った歌。

 最後にチャイナが「ジャズはかっこいいと思ってくれた?」「どうだった?」と聞くと、椅子から、膝の上から、子どもたちが身を乗り出して「オーケィ!」と皆社長さんのように満足そうな身振りで応えるのでした。