熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第四弾 フルボディミステリー 『消えた目撃者と悩ましい遺産』

熱海五郎一座っていうのは、伊東四朗のやってきたような(三宅裕司伊東四朗の白熱した懐メロ合戦をふと思い出す)、東京の軽演劇を受け継ぐ公演なんだって。

 夜の住宅街で痴漢事件が起きる。目撃したのはおばあさんたちだ。観客の目から見て、明らかに別の人、「一応芸能人」の原中イクラ(小倉久寛)が犯人として捕まり、留置所に入れられてしまう。面会に来たのは弁護士の橋上徹(三宅裕司)である。

 イクラは舞台前方にしつらえられた透明ケース(あの、口の所に音が聞こえるよう穴がぽつぽつ開いている奴)の中にいる。ケースの出っ張った角には白いテープがやや幅広に貼られている。下手から歩いてきた橋上は、なんということなしにそのテープの陰に隠れ、そこからイクラをちょっと観察する。ここではっとする。これ、「ふら」ってやつじゃないの。何もしてないのに、なんかおかしいっていう。橋上がただ立っている姿を(おもしろい!)と思ってる自分。朝早いドラマを見ていたら、三宅裕司が出ていたけど、微かになじんでなく、これが映ってなかった、「ふら」が。三宅裕司が鞄からさりげなく「もの」をとりだし、小倉久寛が気忙しく手を動かす繰り返しで笑ってしまう。この二人が痴漢の冤罪を二審までたたかう物語に、原中イクラのデュオの片割れ、美女の安藤京香(藤原紀香)の過去や恋や遺産相続が絡む。歌あり、ダンスあり、フライングあり、渡辺正行ラサール石井春風亭昇太などがきちんと笑いを取っていく。藤原紀香はまだまだだけど、誠実につとめていて、後姿まで取れたての果物みたいだった。筋が薄く、拡散しがちだと思うが、観客が満足しているのが感じられる。南井老人(丸山優子)、かっちり芝居をしていた。深沢邦之、怒られるほど前に出よう。