アトリエファンファーレ高円寺 『ウェアハウス~Small Room~』

 『動物園物語』をモチーフに、二人の男が殺したり殺されたりの関係になるという芝居を、二十歳縺れの年頃に観た。作は鈴木勝秀だったのかな。殺されたはずの男が、立ち上がってにこやかにしているのが印象的で、そこに私は、演劇の可能性とか感じたりしたのであった。「死んだのに死んでない、楽しそう」ってところが好きだったんだと思う。オールビーの戯曲集もその時買ったはず。

 子どもだったなあ。

 これ、愛の物語だったんだね。おのおの心にナイフを隠し持っている者たちが愛しあう時、何が起こるか。愛はいつも、ナイフを構えている。だから残酷で美しい。

 立ち退きの決まった教会の地下室で、一人の男(エノモト=佐野瑞樹)がギンズバーグの詩を暗誦している。そこにやってきた未知の男(シタラ=味方良介)は、円周率をかなり深い桁まで言えたり、一瞥しただけのエノモトの住所を完璧に覚えていたり、謎が多い。でも、一見浸食されていく側に見えるエノモトにも影がある。彼が口にする「僕は君とロックランドにいる」というリフレインは、次第に昂まり「頂点」を迎えるが、「ぼく」は実は「きみ」、殺人者の「きみ」、精神病院(?)にいる「きみ」の半身なのではないかと思わせる。エノモトの意識していないこころの暗がりを、シタラは衝く。わかりあうために。たぶん、愛しあうために。エノモトはシタラを拒否する。二人はナイフを間に挟んで固く抱き合う。愛の残酷さ。加虐性を通してしか語れない愛があると、私にもほんのりわかる。そして、あっさりした女性嫌悪。猫の椅子が大きく影を作るオープニングなのにもかかわらず、うすい描かれ方だった。

 キャストは健闘しているが、ところどころ深さが足りないかな。