新宿ピカデリー 『パーティーで女の子に話しかけるには』

 クロイドン。映画に登場するこの街は、ものすごく思春期っぽい。なにもかも古くて灰色か茶色、とげとげしくて寒々としていて居場所がない感じ。ライブハウス(半地下!)の外の舗道を流れる水まで冷たく拒否的に見える。

 エン(アレックス・シャープ)はこんな世界に住み、こんな世界で、その母(ジョアンナ・スキャンラン)は二重顎の男とデートしている。

 さいてー。

 でも、エンにはパンクがある。1977年、まだ好きな曲を聴いても調べるすべもなく、レコード屋さんで説明したり、果ては「じゃあ歌います」歌って見せたりしていた時代、私たちが「Sex Pistols」のTシャツの「Sex」にきゃーきゃー言っていた時代の、ひりひりするようなとんがった最先端の音楽だ。洒落てるね、ロンドンて、と、エンの友だちヴィック(A・J・ルイス)の首環が似合っているのを見て、心から思うのだった。

 このミゼラブルな(思春期ってそうだよね?)世界に、宇宙人のザン(エル・ファニング)が、やってくる。仲間との絆にいら立つザンと、エンはパンクを語って、恋に落ちてしまうのだった。

 エル・ファニングが輝いている。宇宙人服の黄色いミニスカートもかわいいけど、借り物の粗いチェックの黒っぽい大きなコートで、宇宙人らしくつややかに結い上げた金髪のお団子ヘアの姿がもう、神々しいほどきらきらして見える。悲しさに唇がふるえるところもすてきだし、リアルでキュート。

 思春期が愛やセックスや「親」と遭遇する物語なのかなと思うが(ヴィックの戦く表情がいい)、大元の母親との描写がうまくいってない。台所の会話とか、踏み台昇降のように停滞しています。