スズナリ 唐組×東京乾電池コラボ公演 『嗤うカナブン』

 フィルムノワール?まず、そこからだ。フランス映画じゃなくて、第二次大戦頃のアメリカの犯罪映画。『飾り窓の女』とか。それなら観た。犯罪者になってしまった大学教授が追いつめられていく映画で、いよいよ窮地に立った時、いやになって鞄からキャラメルだして食べた覚えがある、キャラメルを静かに剥いて顔をあげたら、ぜんぜん違う流れになっていて、それにはびっくりした。この他、ほんとにフランス映画を指すフィルムノワールってのがあり、香港ノワールと呼ばれる犯罪映画もあるということだ。

 さて、フィルムノワール・ハードボイルド。セットは大きなボードにパリ/シモキタの風景があり、真ん中に「JAZZ」という店の看板が電飾でちっちゃく光る。看板の下のオレンジ色の小窓には、ジャズのプレイヤーがちいさくちいさく、影を見せている。スズナリはエッフェル塔のようなタワーで、カフェルノアールは垢抜けたパリ風の店である。上の方には何人かのスター(ボガートなど)が描かれている。これらすべてが実は大部分チョークを使った絵だとわかったとき、胸が躍った。

 芝居はジャズのカルテットを組んでいた男たちが銀行強盗の過去を持ち、ずいぶん経ってからもう一度強盗を計画するが、そこにはカナブンという謎の人物と、裏切りが絡む。

 この芝居には芝居以上の深い意味があり、「単純そうに見せて実は複雑なやつ」なのかもしれない。皆手堅く面白く演じるが、すべてが映画に「依拠している」からだ。役名は映画から採られているようだ。はっきりいうと、私は俳優の見分けが最後までつかなかった。キャラが立ってない。終演後「久保井」「稲荷」と声がかかることで、(唐組の人なんだな)と思うばかりだ。それってどうなんだろう、これもまた何かに「依拠している」ってことじゃないのかな。