東京芸術劇場 シアターウェスト『PHOTOGRAPH51』 

 「掃除して!」

 「うるせー」

というのが小学校の女子と男子のデフォルトの会話であったとすれば、まじの言い合いになりがちだった自分に比べて、スムーズに事を運んでいる女子を観察してほんとに驚いたものだった。目が全然違う。(怒ってないの、私かわいいよね…。)ちかちか目元にまたたくコケット。彼我の人生の差を痛感し、敗北し、かといって路線変更もせず今日にいたる。なんだろ、あれ。

 今日の芝居のロザリンド・フランクリン板谷由夏)は、そういう「お掃除上手」とは無縁の人だ。ユダヤ人の差別も男女の差別も厳しい1950年代初頭、抜きんでた能力で独立独歩の人生を切り開いてきた女。

 上手も下手も盆(?)の上も、皆古い木製家具で、劇場に小さく、シンプルでやさしいピアノの旋律が流れていることから、まるでアンティークのオルゴールの中に入ったような気持になる。函に閉じ込められてしまった女、彫像になってしまった女。

 板谷由夏は1975年生まれ、福岡出身。友人に「やらなくていい挑戦」だといわれながらこの舞台に臨んでいる。初舞台だ。ということはガッツがあるという理解でいいだろうか。初舞台と思えないほど堂々として、美しい。「父」のアクセントが一般的なものと違っている。「何か大きな誤解が」というセリフを言う時、「お掃除上手」的笑顔になるのだが、そういう懐柔みたいなことを、ロザリンドはするの?最初のぶつかりあい、ウィルキンズ(神尾佑)の性格と、ロザリンドの性格がはっきりせず残念。脚本をよく読んで、演技プランをしっかり立ててください。巾が欲しいです。自分で思ってるほど、巾が表現できてないんじゃないかな。