DDD青山クロスシアター 『Take Me Out 2018』

 「あんな連中が、最前線へ行く。」家を建てるガタイのいい若者たちをみながら、サリンジャーがふと呟いたと、娘のメモワールに書いてあったと思うけど、言うても甲斐ないことながら、この日本版『Take Me Out』は、みんな体が小さい。いながらにして、暴力、生と死、エロスや欲望、武骨と繊細などを感じさせるのは、スター選手のダレン・レミング(章平)、その親友のデイビー・バトル(Spi)、キャッチャーのジェイソン・シェニアー(小柳心)などの数人である。他のメンバーは、ものすごく努力して、「プロ野球選手」と自分との距離を埋めている。観るほうも、その脳内補完に忙しくて、この芝居全体の「キャラ」がうまく立ってこない。

 キッピー・サンダーストーム(味方良介)はショート、機敏で目配りがきいて余裕がないといけない。歴戦の人らしい余裕がない。メイソン(玉置玲央)は冴えない会計士だけれど、それとは別に魅力がないと。「同性愛者として」ダレンのカミングアウトを憧憬する感じが薄い。もう一息繊細に演じてほしい。水気がないよ。

 ダレンとデイビーが最後に言葉を交わすシーン、章平は好演しているが、ここが山場。気持ちの移り変わりがもっと精緻に見えるといいのに、惜しい。

 架空の球がミットに収まるところ、スイングしてホームランのシーンが(効果音も)気持ちよくかっこよく、一番野球を感じた。

 チームがユニフォームを野球から看守に変え、社会やコミュニティの圧力を示していて面白い。セットはフェンスに囲まれた檻のようで、ロッカーは一人一人をおさめる独房のようなのだ。

 栗原類、変わった男をイメージ通り演じる。「俺は投げたいんだ!」ここ、哀しくてとてもいいセリフだなと思った。