シネ・リーブル池袋 『エンジェルス・イン・アメリカ ~国家的テーマに関するゲイ・ファンタジア~ 《第一部》至福千年紀が近づく《第二部》ペレストロイカ

 8時間(休憩こみ)。全く退屈しなかった。緊密なストーリー、笑える台詞、そして、考え抜かれた装置。「部屋」の枠取りにカラーの蛍光色の細い明かりが使われ、それは舞台の高さに比してとても低く見える。部屋は互い違いにまわるように組み合い、全体が奥へすーっと引っ込んだかと思うと、下から別の室内のセットがせり上がってくるのだった。ただ、「NTLive」の映像では、閉塞感を伝える天井の伽藍様のものがよく見えなかったよ。

 1985年のニューヨーク、ゲイのプライアー(アンドリュー・ガーフィールド)は、エイズの発症を同棲相手のルイス(ジェイムス・マカードル)に告げた。ルイスと同じ職場で働くジョーラッセル・トーヴィ)は、ワシントン(栄転!)への異動を、悪名高い大立者ロイ・コーン(ネイサン・レイン)に打診される。実は同性愛者であるジョーは、妻ハーパー(デニス・ゴフ)とうまくいってない。その心の縺れはハーパーのヴァリウム中毒という形で現れる。

 1990年代初頭、テレビでちらりと見たトニー賞の授賞式は、体を押しつぶされるような痛みと、悲しみと、何かはっきりとは分からない恐れに満ちていた。エイズでたくさんの人がなくなっていたのだ。この芝居にはあの頃のゲイを巡るとても切迫した生と死、そこへ関与するはずの神や赦しのことが語られる。「今死んでいく」ことを扱っているために、啓示の天使の羽音は激しく聴こえ、その羽ばたきは顔を搏つ。観客もまた同じように死や愛のもつれにさらされる。プライア―はベッドの上で、胸をえぐるような声で恋人を呼び、時にはこみあげてくる感情を口をふさいで抑え、時には大きな手を優美に動かして面白いことを言う。「ゲイの話」だからなんてことは関係なかった、ゲイだろうが、ゲイでなかろうが、落ちかかる運命は等しく、愛や憎しみに変わりはないのだ。