帝国劇場 『ナイツ・テイル 騎士物語』

 パンフレット2800円、見本を見てから、買うかどうするか決められるようになっている。ストレートプレイだと、宣伝チラシをもらう時キャスト表もくれるけど、そんなのはないんだね。

 この『ナイツ・テール』というミュージカルは、シェイクスピアとジョン・フレッチャーが共作した芝居がもとにあり、そのシェイクスピアの『二人の貴公子』はまた、チョーサー作の『騎士物語』を下敷きにしている。原作の、「牢番の娘」(名前がない)は飛びぬけていい役に見え、オフィーリアのようだ。最後に結ばれる騎士とお姫様以外は、かなり悲しい結末だ。でも『ナイツ・テール』では、名前ももらえなかった牢番の娘(上白石萌音)にも名がちゃんとあり、暴れ馬から落ちる騎士なんて登場しない。芝居をたのしみにやってきた観客がみんな、楽しかったねと言い合える、現代風のミュージカルに仕立てられている。

 アーサイト(堂本光一)とパラモン(井上芳雄)はとても仲のよい従弟同士、テーベのクレオン王(大澄賢也)をおじに持つ高貴な生まれだ。アテネのシーシアス(岸祐二)王と戦った折に捕えられ、牢に入れられる。そこで庭を散策する美しいエミーリア(音月桂)姫に二人ともが一目ぼれしてしまったことから、二人は仇敵のような間柄になる。

 音月桂が歌うまいので驚いた(うたってる!)。そして踊りも踊れるのである(おどってる!)。彼女は宝塚のトップスターだったのね。失礼しました。上白石萌音は、台詞のつづきで自然に歌を歌っており、それにも驚いた。一番ミュージカルらしく見えた。

 ただ、歌詞(弱強五歩格で苦労したのかもしれないが)や台詞が、カレーに大きな野菜がごろごろ入っている感じで、中に生煮えのものがある。日本語って、ごつごつしてんだなと思ったのだった。