ふくふくや第19回公演 『ウソのホント ―真実なんてクソくらえ!―』

 自分が好き。自己肯定感ともいうけれど、山野海の「自分が好き」は人よりちょっと分量が多い。それが芝居を「お姫様(自分)の芝居」にしてしまいそうになる。いつも、(いい役で嬉しい)と見えるのだ。確かに以前観た時より抑制はきいている、だが、今回、芝居の出来がとてもいいだけに、微かな自己愛が惜しい。勿論その自己肯定感の助けがなければ、山野は五十代の今日まで芝居を続けることはできなかったはずだ。大変だったね。けどそれもう要らない。竹田新として、新しい乗り物に乗り換える時が来たのだ。一番いい役を、他人に手渡す時が。

 風俗の世界をよく調べ、江戸時代さながらのソープ嬢の住み替えとそれにまつわる規格外の人々(女装バー、AVグッズ店長〈山本啓之〉、風俗嬢〈中村まゆみ〉、ソープと中華を経営する謎の中国人〈かなやす慶行〉等々)を鮮やかに配し、清掃のおばちゃん(山野海)とその母親違いの弟(塚原大助)の過去を絡ませて、おもしろく目の離せない仕上がりだ。

 ビルを持っているボンボン(石倉良信)の目張りの顔が可笑しく、キメの芝居が押し付けすぎず、絶妙にうまい。女装バーの店長(浜谷康幸)は女装愛が薄い。薄いと、告白が浮き(茶々を入れるタイミングが遅い)、「いい場面を作ってあげました」みたいな作家の意図が出てしまう。上手外と下手の部屋で二重に進行するシーンはあまりうまくいってない。塚原大助の弁護士は弁護士に見えない。お勉強感がなかった。

 ふくふくやの、風俗で凄絶な一生を送ってきた人のインタビューは、そのインパクトもさることながら、竹田新の肯定も否定もしない受け止める姿勢がいいなと思った。ジャッジしない。作家はこうでないと。来年この芝居は第二弾があるらしい。楽しみです。