赤坂レッドシアター 笑福亭べ瓶独演会『べべコレ東京2018』

 クリスマスイヴ。舞台を遮る黒い幕の上に、白く”幻燈“が出てる。雪だるまや雪の結晶、サンタと橇などがかわるがわるしんみり現れて消える。しんみりするのはこっちだよ。クリスマスイヴに一人で落語だよー。と、心で叫ぶ自分を可笑しく思いながら開演を待つ。ゆるい感じのギター、隙間が多い。初期のビートルズのよう、外してきたなー。クリスマスソングかけないしー。今日の落語会の笑福亭べ瓶さんは、あんなに鳴り物できるから、きっとすごく耳いいと思うんだよね。これから始まるの落語だから、あんまりお客緊張させてもいけないしね。

 客電おち笑福亭べ瓶登場。声を張るところから、思っていたのと違った。しゅっとした人かと思ったら、投網のような声でがんがん飛ばす。身の回りに起きた可笑しいことを次々話してゆく。わたしはレンタカーの話と、飛行機の座席の周りを全部占有されていた話が好きだった。あれ、丁寧に話したら、もっと面白いのじゃないかな。話の内容を、引いて見渡したとこがない。師匠の話と手法が同じなので、師匠の手法の「ねたばれ」になってしまっている。師匠が見たら「もっとうまいことやれ」というと思う。60分話したのに短く感じられ、「寝てない」と言ってたのも全然わからないし、鳴り物もすごく練習しているかもしれないが、落語もちゃんとやっているのだと思える。

 中入り15分、落語が始まる。「相撲場風景」。これいわゆる「尾籠な話」ってやつだね。びろうなはなしだが、べ瓶さんは一番難しい所を巧く上品にやる。一升瓶が抜けない所と飲んじゃう所。おえーとお客が思ったときにすっと話を落とす。上品というより下品でないって感じかな。ある意味とても難しい。

 人物によって全然顔が変わる人だなと思った。この話の右の横顔は明治の相撲ファンに見えたし、次の話の(『妾馬』)左の横顔のお殿様はとても二枚目、正面から見る八五郎は市井のあんちゃんだった。八五郎のおっかさんもとてもよかった。

 殿様のお手がついて「お鶴の方様」になった妹のお鶴に男の子が生まれ、兄の八五郎はお屋敷を訪ねていく。

 こまかいこというと、殿様が「お鶴の兄上」っていうのいいの?ここ敬称なしじゃない?あと城なのお屋敷なの?

 お鶴の方のほうを向いて話し始めるところ、みていて(あー、人情話にはいりますね)と思ってしまった。ここ、笑いからなだらかに入らないと「泣きのパッケージ」に見えてついていけなくなる。「泣くなよ」とお鶴に言うのも長い。「おおきに、おおきに」というとこで、声涙下るっていうかほんとに泣いてる。気持ちが入ったんだと思うけど、泣いちゃだめ。追いつけないし一人の話芸だし、芝居でもほんとに泣く人(えー)と思ってしまう私なのだった。

 「鶴の一声」できちんと語り終わり、舞台が暗くなり、赤ちゃんのスライドと一緒に、52万5600分の一年を歌う、すてきな歌がかかる。あ、この人趣味全開にしてきたなと思ったのだが、その趣味は「甘い」。スウィートなの。その甘さがよく見えるよう成長してください。赤ちゃんかわいかった。

 今日の落語で一番好きだったのは、電車でカップルがキスしてて、「女の子と目合うたんですよ」といってふっと笑った顔でした。

 つぎはバレンタインデーに会いましょう。