高円寺 カフェkuutamo 『ブックカフェ de 上方落語 笑福亭べ瓶』

 「今日の反応を見て次の会のオチを決めようと思います。」えっ。16日の。ごめんね。うっかりしてて。

 でも、このべ瓶さんの「死神」は、オチがどうのこうの言う以前の問題のような気がしたよ。つまりあの…どちらのオチも大して面白くない。理に落ちる。

 会場は劇場「座・高円寺」にほど近いカフェ「kuutamo」で、急な階段を上ると白い壁、白っぽい木の床、時代のついたライティングデスク、窓にベージュと青のカフェカーテンが見える。設えられた立派な高座の後ろに本がぎっしり入った本棚が二面にあり、どれもこれも全然読んだことがない。かろうじて『チポリーノの冒険』を知ってるくらい。しかも新訳になっててびっくりだ。あれ、ものすごく挿絵がかわいいよね。部屋の巾に並んで三人がようやく掛けられるスペースに、20人くらいの人が静かに座る。ここは、ここは、そうだ、屋根裏のリーサのお部屋、インゲヤードのお部屋、オンネリとアンネリのお部屋だ。そのかわいい完結した部屋の中で、高座に上がり、落語をやるべ瓶さんを、皮肉でもなんでもなく、心から尊敬した。えらいよあんた。と同時に、この女性客の多い客席で、この部屋で、強姦ネタのまくらを振るべ瓶さんを心の底からいやに思う。なんやねんあんた。それはないよね、とべ瓶さんの左後ろの壁にかかる緑色した点々のテキスタイルの額を見る。一つ目の話はエロ本におとうさんが『竜馬がゆく』のカバーをかけたために起きる可笑しい出来事。話の進み方がゆっくりで畳み掛けないので冗長になってしまう。作家の名前も並列で、運動部の連中を怒るときも「はなれろ」というばかりなので退屈。昭和57年生まれなら学生時代のこともよく憶えているはずなのに、特に穿ったネタもない。残念です。

 「死神」でも思うけど、べ瓶さんは「マジ」になった時の気持ちが胃の腑の方まで深く徹っていて、(明日からでも役者つとまるな)と感心する。でも役者じゃないし。「にいはん」「ねえはん」という呼び名が珍しく、そういう呼び方をする市井の人々のリアリティがもっとあればいいと思う。「お前の名前呻きよんのや」というの少し変、「呼びよんのや」のほうがいい。中心人物の「ヒデ」をもっとふっくら演じないと、話を引っ張っていけないよ。ふらふらした、魅力ある人に作ってほしい。「マジ」の力で話を持ってくの、限界がある。かわいくないとね。

 クリスマス、バレンタインデーと会ったけど、次私たちどうしようか?「死神」のあとなに?