Bunkamuraザ・ミュージアム 『クマのプーさん展』

 ニューヨーク公共図書館に所蔵されている本物でなく、複製されたプーやトラーやコブタがいるケースに近寄り、彼女と一緒に来た20代のお兄さんが「かわいい…」とつぶやいている。

 そっ、岩波の『クマのプーさん プー横丁にたった家』に載ってた本物の写真が、古びたおもちゃの怖さを写し出していたのに比べ、この複製たちはほんとにかわいい。プーの毛は陽気にくるくるカールし、眼が「遊んでおくれ」と言っている。トラーはぴょんと飛び掛かりそうに座り、コブタは手をのばして精一杯存在を主張している。

 これってクリストファー・ロビンの出てくるリアルなプーの物語、映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』で使われた小道具だって。実際には、画家のシェパードが「プー」としてえがいたのは巻き毛の「プー」ではなく、シェパードの息子の持っていた「グラウラー」だった。(ある本の中の復刻された「プー」と「グラウラー」の並ぶ写真を見て、「どう見てもグラウラーがモデル」なのにびっくりした。)『クマのプーさん』はA.A.ミルンの作品ではあるが、それと同じくらい、E.H.シェパードの作品でもあるのだ。

 シェパードのスケッチ、たとえば、アッシュダウンの森を、ミルンと訪ね、その場でスケッチしたものや、木のスケッチ、コブタの家のためのスケッチなどを見ると、なめらかな紙の上を画家にとってちょうどいい濃さの鉛筆が気持ちよく走り(きっと鉛筆はちょうどいい感じに尖っていて)、木の表面を捉えるために描き進めば進むほど翳が寝かせた鉛筆から生まれてくる。シェパードの素早い的確さが目を引く。スケッチの、コブタを「ゴシゴシやる」カンガのスポンジが、コブタの頭(顔?)の真ん中にあたっているのを見て、くすくす笑うOLと一緒に、私もつい笑うのだった。