丸の内TOEI 『闇の歯車』

 (テレビなの映画なの?)

 要所要所で疑問が頭にひらめく。

 テレビだったらとってもよかったし満足する。まず、水も漏らさぬ男たちのキャスティング。誰一人見劣りしない。瑛太の眼の光、緒方直人のせっぱつまった充実、大地康雄の笑い、中村蒼のぼそぼそした甘さ、それを橋爪功がいなすように軽やかに束ねる。話は面白く、脚本を読んだ俳優はみなすぐ出るといったに違いない。考証も頑張ってるしお金もかかってる。特に瑛太は、どの画面を見ても引き緊っていて、ふらふらしない。ほんとの意味で核になってた。繊細な若い人と思ってたのに。

 でもねー。例えば提灯をヤモリが這うシーンをきっちり撮ってて、確かにいい塩梅にヤモリはそこに「居る」んだけど、その尺は長すぎる。いい所を捨てないと贅沢感出ないし、品がなくなると私は思う。そして女の人たちへの演技指導が不十分。妊娠した女の人がいつもおなかに手をやっているのは、「説明」で「演技」ではない。テレビだ。瑛太がびっくりするシーンも、あれは「説明」「手がかり」で演技とは言えない。あと「まずく」という発音が若者アクセントだった。これだけお金がかけられるプロジェクトなら、もう何回か撮ってもよかったんじゃないの。あと擬闘がまずくない?お腹を刺されたら江戸時代なら死んじゃうよ。緒方直人ががんばっているのに、最後のところが何か玩具めいていて、手に持ったもので安くなっちゃった。

 もっと女優さんにお金と手間をかけてほしい。鬢の毛がそそけるところとか(そそけないのだった)、大切に撮らないと、結果男優も光らない。女の人のことをよく考えないジャンルに明日はありません。