赤坂ACTシアター 『俳優とオーケストラのための戯曲 良い子はみんなご褒美がもらえる』

 トライアングルが、船の舳先のように、音楽を切り裂いて進んでいく。そのちりちりいう音が、主音。(ていう?)オーケストラととてもあっていて、作曲したプレヴィンて凄いなーと一瞬で感得する。そしてよく練られた隙のない演奏と緊密な指揮。ありがとうヤニック・パジェ(音楽監督・指揮)。どっちかっていうとさー、こういう不協和音とか現代音楽とか、自分の中では断捨離的存在になっていて、さっさっさっと消しゴムかすみたく小箒で掃いて、塵取りで取って捨ててたのに、いきなり塵取りに金塊発見したような気持になった。すすすごいやん。生まれて初めてオーケストラを「クール」と思いました。

 パンフレットで作者のストッパードが「オーケストラについて何か書こうとしても、私は幼稚園でトライアングルを叩いたぐらいの経験しかない。」と言ってて、めっちゃ笑ったけど、これまたクール。三角形というのは平面を構成する最小の多角形、3人のアレクサンドル・イワノフ(サーシャ・イワノフ=シム・ウンギョン、オーケストラを持っているイワノフ=橋本良亮、反体制のイワノフ=堤真一)は一人の人間なのかもしれない。或いは「宇宙は三角形からできている」(バックミンスター・フラーの模型をご覧ください)のだから、その三角形は世界をも表しているのかもしれない。オーケストラは街であり他者だ。それを指揮したい統括したいという心はソヴィエトでも資本主義社会でもあり得る。節を折る、又は狂気に陥ったとみることもできる。これは短い深遠な寓話なのだから、小手伸也にもっとリラックスしてたっぷり演じてもらいたい。堤真一、可もなく不可もない。意見に命かけよう。橋本良亮は最初の一言が、舞台の全ての音を受け止めるくらいのデリケートさじゃないとつとまらないよ。オーケストラを受ける一言目が、二回とも不用意です。