吉祥寺シアター serial number 02 『機械と音楽』 2019

 「10月革命が成就するロシアの歴史的な夜である。と、走ってくる少年、15歳のイヴァン・レオニドフ。人ごみにまかれ戸惑っているらしき少女オリガを発見し、叫ぶ。

 イヴァン   オリガ!  」

 言えてねー。オリガ(きなり)が見えてないし、実体もない。愛がない。この人イヴァン(田島亮)の大事な幼馴染じゃないの。田島亮、ハンサムだし、頑張っているけど、声は嗄れ気味で、その時その時の台詞を一生懸命言うだけで、役柄が俯瞰できてない。結局どういう話なのか、わかってない。それは作家・演出家も同じ。エレーナ(三浦透子)、妻ニーナ(熊坂理恵子)、オリガと、三人の全く違った女が出てくるけど、だから何っていうくらい放り出しっぱなし。エレーナとのせめぎ合う愛、ニーナに与える抑圧、オリガへの淡い大切な思慕っていう三本柱にならないとだめじゃない?三浦透子もっとがんがん行こう。役柄は命綱なしで愛を叫ぶよう要求してると思う。マヤコフスキーとも関係あるよね。俯瞰して。

 ロシア・アヴァンギャルド建築の旗手イヴァン・レオニドフ、コンペで勝てず、敵でさえその純粋な天才性を認めているのに、建物は全く建たない男。こんな面白いプロットがありながら、まじめに深く研究した脚本にすべて埋没してしまい、結果フラットな作品になっている。惜しい。

 マヤコフスキーと自分の妻と3人で同居していた(妻はマヤコフスキーと関係があった)オシープ(大石継太)が革命の夢の終りを陰翳深く演じる。この人本当に正体のわからない面白い人だった。ギンズブルグ(酒巻誉洋)の眼鏡も少し笑いたかった。

 ネットで演劇情報をみると皆serial numberが面白いって言っている。期待しすぎちゃったかなあ。頑張ってほしい。