M&Oplays produce 『二度目の夏』

岩松了版『レベッカ』。そう思ってみると水面下でこわいことがいろいろ起こっているような気がする。水面下のレベッカ。『レベッカ』って、ある大貴族のもとに嫁いだ女の子がえらい目に遭う話。屋敷は前の奥さんの気配でいっぱいで、夫は自分を愛してはいない。前の奥さんを崇拝する家政婦がいる。

 染色会社(ここが怖い!頭の中で染物を水にさらす工程に思いをめぐらすと怖い)を経営する田宮家の若い当主慎一郎(東出昌大)と妻いずみ(水上京香)は別荘で夏を過ごす。仕事で忙しい慎一郎は、いずみの話し相手として、自分の年下の親友北島(仲野太賀)を招いた。別荘は芝居のように慎一郎やいずみ、北島の動向をみまもる視線でいっぱいだ。慎一郎は当主として振る舞い、よき夫として振る舞い、親友として振る舞う。妻への結婚一周年プレゼントを衆目の中で渡す。慎一郎の真実ってなんだろうなと考えながら、その真実は辿りついたら『レベッカ』のようにとても矮さい者であるような気がする。手足の醜い小さな真実、世界のあらゆる真実は皆、微細に揺れ動いている。それが真実だとおもうことはできても、断言はできないと岩松了はいい、虚妄のうちに登場人物たちは生きる。愛は慎一郎を怯えさせる。愛の中では虚妄と揺れる真実、嫉妬が泉のように湧き出しているからだ。でもさ、「二度目」なんだよね。

 東出昌大、たとえば「そば粉」っていう台詞を、正確に丁寧に発語してほしい。「そば粉」、声が割れてるよ。あと、芝居がなめらかでなく、ヒントがいっぱい。その割にわたしわけわからなかったけど。まず、「台詞をちゃんという」ことを目標にした方がいい。自分のハードル上げすぎている。片桐はいり菅原永二の役をうらやましがっていたが、これもいい役だと思う。