DDD青山クロスシアター 『絢爛とか爛漫とか』

 昭和初期、一人住まいの裕福な青年古賀大介(安西慎太郎)の居室で繰り広げられる青春の四季の人間模様。かと思ったらなかなか、そんな甘いもんではなかった。

 四人の青年が友人として登場し、それぞれ文学と相渉る。この文学(芸術)の存在が、とても大きく、底知れない。例えて言うなら、文学は怪物で、対する青年はいのちを賭けて鉈一本で、怪物に手疵を負わせようとする。書けない悩みを持つ古賀。上流階級のモダンボーイ泉(鈴木勝大)。母親の影を背負う耽美派加藤(川原一馬)。さらりと見どころある作品を書く諸岡(加治将樹)。それぞれが芸術と必死で取り組む。このくだりが重く、ほんもので、目が離せない。青年達も一人一人が「必殺の一撃」の芝居をする。古賀が小説家を止めると言い出してからの加藤の切ない表情、涙を浮かべて詰問する古賀、その詰問を受けて立つ諸岡、そして目の前のやり取りを動揺しながら受け取る泉。後半よかった。しかし、この芝居は、序盤その「必殺の鉈」で料理をデリケートに作らなければならない。鉈で千切りや細切りをこなし、軽く、テンポ良く、身体がリズミカルに動き、声は自在に調節できないとだめ。言ったら冷やし中華作るのに、鉈を頭の上から振り下ろしてちゃダメでしょう。怒鳴ってばっかりだったね。

 安西慎太郎、「書けない」っていうのは海でブイと離ればなれになってく感じだよ。『キャストアウェイ』でトム・ハンクスがウィルソンと離れるみたいな。しかもおぼれているのです。実感なかった。

 加治将樹、友達とじゃれる距離がちょっと近い。後半意外性がない。あの部屋に、心入れに花を活けているのは女中のおきぬだろうか。(いい気なものだね)っていう、終わりのような気がしたけれど。