シアタークリエ 『ラブズ・レイバーズ・ロスト ~恋の骨折り損~』

 心のチューニングがめっちゃ難しいミュージカルであった。シェークスピアの、何を思ったか王様と三人の学友、という多めの人数を踏襲し、そのうち二人は髪型が似て、その上途中でパジャマに着替える。混乱してしまう(見分けられない)展開だ。なぜか開演前にジュースを売りに来たバーテンのコスタード(遠山裕介)と、ぶっきらぼうなウェイトレスのジャケネッタ(田村芽美)が、二人だけ芝居の空気のチューニングがうまくいったのか、本番でも光っているという不思議。ちゃんと存在している。特に田村芽美は、ソロナンバー、『Love’s A Gun』が作中出色の出来で(歌の後半猛獣みたいに盛り上げすぎで駄目だけど)、言葉と感情をきちんと届けることができている。他の人々は、シェークスピアの台詞は言わなきゃいけないし、踊らなきゃいけないし、歌うシーンは多いしで、大変そうだった。コップの縁ぎりぎりまでちゃんと水は入っているが、表面張力で膨らんでくるものがない。溢れもしない。「たいへん」っていうのが見えちゃうのだ。海外の作品を抄訳して手渡された感じ、ライヴの息遣いや迫真性、「魅力」に欠ける。大学の先生たち、要る?要るように演じてほしい。ジャーマンポテトズのところが洒落ててよかった。

 中別府葵、歌いだしの「かれに」の所とてもスムーズでよかったが、「男は要らない」と歌う時、コーラス(wow wowっていうとこ)は、おなかの空いた犬(狼?)の遠吠えの気配がちらっとした方がいいと思う。

 ファーディナンド三浦涼介)、私は世代的に眉を剃っている男には髪一筋ほども心を動かされない。しかし、I don’t need loveと歌うまっすぐな声はよかった。眉毛このままいくの。あの眉毛にファンが多いのだろうか。