serial number 03  『コンドーム0,01』

 脚本は手堅い。役者もきちんと演じる。結果おもしろい。

 なのに、文字が話し言葉になるところで、めっちゃまずいことが起きていると感じる。例えば、「え。でもさ。」という言葉は、はっきり「芝居の台詞」として発せられる。言ってみれば空間に穴がない。風船の中に水を填(つ)めるように、芝居は段々に拡張していくが、とても予定調和なやり取りに聞こえる。皆実力ある役者で、脚本が浮かないように細心の注意を払い、芝居を助けているが、時折顔をのぞかせる「わざとらしさ」にちょっと疲れてしまう。なんといっても私たちはもう、「現代口語演劇」を通過しているのだ。

 コンドームの開発をする人々、売る人々、広報の人、皆部門の別を忘れ、0,01の薄さの新製品のために集結し、「それ」は何のためか、誰のものかを考える。男のこと、女のこと、話は徐々に広がり社会構造やジェンダーに接地しそうになる。しかし、詩森ろばは大声を出さないし説教もしない。その代り、芝居は何度も同じくらいのいいシーン(散発的な打ち上げ花火)を繰り返して、「ありがちないい話」に着地する。これどうなんだ。深い話にするんじゃなかったのか。

 田島亮、前回は「いっぱいいっぱい」だと感じたが、今回は丁寧にやっている。しかし全然意外性のない役作りで、十六歳の原節子みたいである。女性に理解ある男たちよりも、理解のない男たちの方が演技が光っていた。そういう男の人は、たくさん演じられてきてるからねぇ。理解ある男の人たち、頑張ってほしい。営業のワカ(碓井将大)、気のいい考えなしの青年でとてもよかったのに、「僕に教えてくれたように」という台詞が浮いてて「わざと」で、超ざんねん。