2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

NODA・MAP『MIWA』

舞台の背後と手前に焦点を結ぶ不思議な屋台セットの前に、白と黒の二脚の椅子があって、舞台が一瞬暗くなると、明るくなったときにはもう、芝居がにぎやかに始まっている。芝居のカットインだ。この芝居の全ての速度が、ここに凝縮されていると思うくらいの…

L'Equipe vol.1『秋のソナタ』

客席の「外」、ロビーから、くぐもった音でピアノ曲が聴こえる。ちょっと、エヴァの気持ち。 上手にドアと、燭台を置く小テーブル、下手にもローソク、中央に布で覆われたテーブルと椅子、その後ろに吊り下げられた大きな窓。 窓の向こうから、エヴァ(満島…

休憩

おはよー直前でごめんねーきょうねー10時45分からいい映画やっているよー。といわれてふらふらと出てきた六本木。観に来たのは『激戦』、知っているのは名前だけ。主体性ないね。でも六本木だから一応いい方の靴はいてきたよ、とぶつぶつ言いながら映画…

スズナリ『SEX,LOVE&DEATH』

LOVEを、SEXとDEATHが挟んでいる。それぞれ1996年、2000年に初演された『13000/2』と『スモーク』、今回新たに書き下ろされた『死んでみた』の三本を、オムニバス形式で上演する試みだ。どれもケラリーノ・サンドロヴィッチの作品である。出演…

シアターコクーン『唐版・滝の白糸』

10月19日(土曜日)マチネ。劇場二階に向かう途中、階段から、舞台の、二階建ての廃墟が見える。ぼろぼろの瓦を乗せている。落ちてるところもある。電信柱が三本。どこをみてもとても作りこまれていて、胸が躍る。上手と下手に、古くなったテレビやら、…

光文社知恵の森文庫『ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック』

スティングが流れたら、ちょっと驚く。 ――スティングじゃないか!どうしたピーター・バラカン!嫌いなのに! ピーター・バラカンのラジオ番組では、ロック、ブルーズ(「ス」じゃない)、ファンキ(「ファンキー」じゃない)なソウル、あまり人が知らない民…

こまつ座『イーハトーボの劇列車』

田舎者って、たとえば、おしゃれなカフェを全然知らない人?それともいろんなカフェを、知り尽くしてる人?あとの方じゃないの。田舎者のあこがれはいろんな形をとる。流行の中心を意識しすぎて、受容が度を越えたりする。宮澤賢治は田舎者だったと思う。エ…

DULL COLORED POP プロデュース『最後の精神分析――フロイトvsルイス』

精神分析で有名なフロイトは、強硬な無神論者でもあった。このフロイトと、熱心なクリスチャンで、聖書を基にしたファンタジー『ナルニア国物語』を書いたC・S・ルイスが、神の存在をめぐって架空の論戦を繰り広げる。今しもドイツとイギリスが開戦しようと…

パルコ劇場『ロスト・イン・ヨンカーズ』

強さ。生きるための強さって、いったいどのくらい必要なのだろう。めそめそしていると、「そんなことで世の中渡っていけると思うなよ」と誰かが言う、あれって、どの位が適正量なのか。 『ロスト・イン・ヨンカーズ』は、そんな強さ――タフネスに取りつかれた…

映画『そして父になる』

10月なのに暑い。半袖。風が強くて日が照ってる。すんごい早さで雲が流れていくなあ。としみじみ見入っちゃうくらい用事のない日。『そして父になる』を見に行った。 都心の高層マンションで、妻みどり(尾野真千子)と息子慶多(二宮慶多)と暮らすエリー…

彩の国さいたま芸術劇場『ムサシ』

川岸に立って、川の流れをいつまでも見ていると、不意に川が流れているかどうかわからなくなる。動いているのは岸の方のような気がする。木や草、地面と一緒に、結構な速さで流される。くらくらする。舞台の奥から竹林があらわれ、しずしずと手前に寄せてき…

葛河思潮社『冒した者』

上手バルコニー席から、舞台上にばらばらに打ちこかしてある椅子が8脚、見える。下手の袖に、舞台に背を向けた椅子が6脚ある。擦れて、すこしグレーがかった黒い床。羽目板の筋がきれいな模様をつくる。マーラーの『巨人』が流れている。巨人の重い足取り…