2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ハイバイ『月光のつゝしみ』

点数の出ないピンボールマシンみたいな芝居である。経路に仕込まれたスイッチの上を、確かに球がとおっていくのに、手ごたえはみんな消えてしまう。たぶん、点数はすべて水面下でつく。しかしそれは見えない。 新婚の、年の離れた夫婦、民夫(松井周)と若葉…

オーチャードホール高橋幸宏ライヴ

テレビ。30年位前。 「僕のお父さんのまねをします。」 おもむろに迫真の(たぶん)咳払いをする高橋幸宏、田舎の高校生はそのシュールさと説得力に感じ入ったのだった、というようなことを思い出しながら、舞台後方から登場する高橋幸宏とバンドのメンバ…

世田谷パブリックシアター『ジャンヌ』

サッカーワールドカップフランスチームが、ナウシカにかしずいている。ジャンヌ・ダルクのイメージって、こんな感じだ。 フランスの小さな村で生まれた農夫の娘ジャンヌ(笹本玲奈)は、14歳のころから神の声を聞くようになる。その声は、イギリスに占領さ…

本多劇場『悪霊――下女の恋――』

松尾スズキの芝居を観て考える。もしも股間に眼がついていたら、そういう人間の恋愛は、地獄のようなものに違いない。恋の絶頂と覚醒が、同時に来る。 キメ(広岡由里子)の息子タケヒコ(三宅弘城)の足の間にも、たぶん眼がついている。それも母の眼だ。か…

シアターコクーン『かもめ』

チェーホフ。えらい人。1898年のスタニスラフスキー演出『かもめ』以降、その劇作家としての声望は揺るがない。一見かかわりなく見えるセリフ(外面)と心理とが、交錯しあって精緻な芝居を作り上げる。これって予断?予断かも。 チェーホフは自分の戯曲…

博多座『アマテラス』

客入れの音楽などはなし、劇場はざわめいているが、舞台を見ると幕前に大きな太鼓がこちら向きに置いてある。赤い照明が当たっていて、日輪のようにも見える。太鼓の中のアマテラス。 無音というのは、音の一種だ。静まった太鼓には、つよい音や明るい音、「…