2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

新国立劇場小劇場 シス・カンパニー公演 KERA meets CHEKHOV vol.3/4 『ワーニャ伯父さん』

揺れる葉叢、大きい葉、小さい葉、浅瀬で模様を描いて透明に盛り上がる小川の水、花、滴をためるくもの巣、丸く差し込む日の光。景色をぼーっとみていると、一つ一つが異なる音を発しているような気がしてくる。「調子」を感じる。このケラリーノ・サンドロ…

FUKAIPRODUCE 羽衣 第22回公演 『瞬間光年』

暗い舞台。波の音。スモーク。 ランダムに4つ下げられたやや大きめの電球に、飾りのシートがうろこみたいに貼られている。宇宙のただなかに、電球のように吊るされて、自分のつま先越しに、底深い闇を見る。 窓を開けようとしている男(男ちゃん=キムユス)…

シアターコクーン・オンレパートリー2017 『プレイヤー』

先週お能観たばっかりだからかもしれないが、異界って、目に立たないほどのゆるやかな坂をすり足でのぼり(あるいは下り)、気づかぬうちにたどり着いている場所なのだろうと思う。あるけどない、ないけどある、そんなところ。作者の前川知大も、異界につい…

カクシンハン第11回公演 『タイタス・アンドロニカス』

おもしろい!と驚愕し、さっきまであんなにパンフレット1500円に拘っていたのを忘れる。 可動式の低いイントレに白い覆いが、いい具合に末枯れた感じで継ぎ目の皺を見せている。その上にぎっしりと立つ登場人物たち。エアロンになる俳優(岩崎MARK雄大)が、…

杉本文楽 『女殺油地獄』

世田谷パブリックシアターの舞台の丈いっぱいに広がる大きな暗がりを、こちらも目をいっぱいに見張って見上げる。人形になったような気がする。あの暗さの向こうに、今日あたしが繰り出す膝、伸ばす指先の、決められた道筋があるのだ。そしてその先にキメラ…

日本総合悲劇協会 vol.6 『業音』

〈好きなのにあの人はいない〉明るく暗く危険な愛の歌謡曲が女の声で次々にかかる。7か所で吊られた白い幕。緩んでる。〈あなたと会ったその日から恋の奴隷になりました〉幕の後ろに広がるのは、白く塗られた壁で、キルティングのようなランダムなふくらみを…

渋谷TOHO 『メアリと魔女の花』

『君の名は』があんなに当たったのは、6年前のあの地震と津波の傷を、語りなおして慰め、なだめ和らげてくれたからだ。大きな天災に遭ったあのトラウマと同じように、原発事故のこと、原子爆弾のことも、日本に住む人々の深い傷になっている。あの時、爆発さ…

明治座 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

幕末、横浜の港崎遊郭岩亀楼。病に伏せる亀遊花魁(中島亜梨沙)の世話をやく芸者お園(大地真央)。亀遊はアメリカ人イルウス(横内正)に気に入られてしまい、思う人にも裏切られたと思って剃刀で自害する。それがいつのまにか、立派な辞世の歌を作って死…