2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
1954-1955、『木村伊兵衛外遊写真集』として後にまとめられた写真、パリの写真の展覧会である。「外遊」という言葉のすんごいものものしさ、彼我の距離は果てしなく遠かった。写真の展示の最初に朔太郎の、ふらんすに行きたいけれども無理だから背広買う、っ…
「バラカンさんのジャズのコンピレーションアルバム貰わなくちゃ!」一生懸命ホール入口でボルボのアンケートに答えるのであった。 二台ディスプレーされたうちの赤い方(フュージョンレッドメタリック、XC40TA)、背の高い頑丈そうな車の周りをまわって、運…
スウェーデン語を習い始めのころ、ワークブックに、「スウェーデン人とはなんですか?」という、難しい問いがとつぜんでてきた。「国籍」って単語を急いで調べて答えたけど、「あれはなんですか」レベルの人にすごい質問をする。 現代サーカス(アーティステ…
舞台上空に、瞳孔のような星雲のような月のようなドーナツ型の鏡が吊るされている。舞台の表面は砂で覆われ、中央のタイルを侵食しつつある。電信柱は傾ぎ、錆び色のバス停は折れて、ベンチの背板はない。 世界はもう終わったんだね。そして破れたんだね。そ…
今はもう『七人の侍』を作れる時代じゃないんだ、と、90年代の初めごろ、黒澤がやや憤然と言っていたような気がする。それはこのミュージカル『生きる』の冒頭で、市役所の人がさっと膝を上げたときの、そのひざ下の長さを見ただけでわかる。戦前生まれと現…
気が重い夜、座席に向かって息を吐き、くるっと振り返って舞台を見る、とたんに胸が広々として気持ちがあがる。上手奥のスクリーンに『書を捨てよ町へ出よう』と凝った文字で書いてあり、下手スクリーンには空色のウサギの模様(確かにあれはミナペルホネン…
どうする民藝! どうした丹野郁弓! どうなってる黒川陽子! …と、縺れてなかなかほどけない焦燥感でいっぱいになって帰ってきた。まず、私が「若いほう」に数えられる客席がいかん。幅広いおきゃくさんに来てもらわないと。たまに若い人みても「関係者の孫…
自分が好き。自己肯定感ともいうけれど、山野海の「自分が好き」は人よりちょっと分量が多い。それが芝居を「お姫様(自分)の芝居」にしてしまいそうになる。いつも、(いい役で嬉しい)と見えるのだ。確かに以前観た時より抑制はきいている、だが、今回、…