2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

さいたまネクスト・シアターゼロ 『ジハード ――Djihad―― 』

始まる前に配られた紙に、登場人物の辿った道の地図がある。 ブリュッセル―イスタンブール。イスタンブール―キリス―アレッポ―ダマスカス。なじみがあるようでないこれらの地名の中で、一つだけ、ぴかっと光って感じられるものがある。シリアのアレッポだ。市…

博多座 『六月博多座大歌舞伎』 (2018)

夜の部の最初は『俊寛』。静かに静かに緑と柿色と黒の定式幕が開くと、そこは一面水色の(浅黄)幕。上手の隅に房を垂らした見台が見える。竹本なんだなー。と、目で確認。隣に三味線。どどどんと太鼓の音、波にも風にも聴こえる。義太夫が鬼界が島であると…

吉祥寺シアター 『日本文学盛衰史』

紙の上に横たわる例えば森鷗外、夏目漱石などの文字が、空気を入れられ、初めはよろよろと、次にはスーツなどを着て、髭を生やして立ち上がる。私が感じ入ったのは「星野(河村竜也)さん」という人物で、この人きっと星野天知なんだけど、学校で習った符牒…

丸の内TOEI  『終わった人』

机の並ぶ広いオフィスの一隅に4,5人の人だかり、一人の男が紙袋を下げ、皆のあいさつを受けている。彼の名は田代荘介(舘ひろし)、今日で定年だ。荘介は別れの挨拶を受けながら、紙袋を持った方の手をあげて、眼鏡の位置を直す。ここ、よかった。無防備で…

シアターコクーン・オンレパートリー2018 『ニンゲン御破算』

「吾胸の底のこゝには 言ひがたき秘密(ひめごと)住めり」っていうの思い出しました。心の底に頭蓋の奥に棲みつく、もう一人の私。 幕末。錦旗を押し立てた官軍と、彰義隊とが相争っている。そこへ割って入るお弁当売りの女お吉(多部未華子)は、官軍に入…

熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ5周年記念 東京喜劇『船上のカナリアは陽気な不協和音~Don't stop singing~』

「お客さんが面白いと思っているあたたかい拍手。テレビの人が出て来て面白いことをやってくれる喜び。」 と、去年の熱海五郎一座第四弾を見て、手控えにそう書いてある。 今年の熱海五郎一座、おっと思いました。贅肉が落ちてる。テレビの過去のネタが極端…

東京芸術劇場 シアターウェスト 『TVUstage2018 家族熱』

ひとまわりしか年の違わない、美しい継母朋子(ミムラ)。その継母を思いながら、今は彼女の出て行った田園調布の家に父と弟と住む医師の息子杉男(溝端淳平)。戻ってきた実母、祖父の死、様々な事件を挟んで、三年後、二人は祖父のお墓でばったり出会う。 …

恵比寿ガーデンシネマ 『29歳問題』

鏡を覗く度、まつげがみんな手を伸ばして、「タスケテ!」と言ってる気がしたあの頃、あの加齢不安、あれ30才くらいだったのかなあ。こういう時、いつも『風と共に去りぬ』の出産に関するスカーレットの言いぐさ、「いい具合に苦痛でぼやけて」っていうの思…

三越劇場 『新派百三十年 六月花形新派公演 黒蜥蜴 全美版』

なぜ突然着替えるの明智(喜多村緑郎)?とか、1ミリも考えない。 芝居が走っているからだ。その速度は、ジャック(市村新吾)の思い切ったツーブロックの髪や、一寸法師(喜多村一郎)の入念な青いメイクや立ち廻り、殴られてそっと鼻血を出す新聞記者郷田…

渋谷HUMAXシネマ 『犬ヶ島』

黒澤明(1910-1998)、『七人の侍』。子供の時に、テレビで初めて見たの。攻めてくる野武士、土砂降りの中の切りあい、三船敏郎の激しく鋭い身のこなし、宮口精二がむかっ腹を立てながら(と後年知った)横っ飛びに吹っ飛ばされる壮絶なシーン、こどもには…