2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧
芝居を予約してチケットが郵送されてきた。チケットだけじゃない。「サイリウム」が入ってる。サイリウム=化学反応で蛍光色を発する器具の通称。psyllium。送られてきたのは片手を広げた長さのスティックであった。突然襲う黒い不安。①わすれる②時ならぬと…
ディストピア。2218年、廃墟と化した世界、そこにランダムスター(橋本さとし)と呼ばれる男がいる。彼はレスポール王(西岡徳馬)の配下、敵を蹴散らして手柄をたてる。バイクで道を急ぐランダムスターとエクスプローラー(橋本じゅん)の前に三人の魔…
パンフレット2800円、見本を見てから、買うかどうするか決められるようになっている。ストレートプレイだと、宣伝チラシをもらう時キャスト表もくれるけど、そんなのはないんだね。 この『ナイツ・テール』というミュージカルは、シェイクスピアとジョン・フ…
ヴィヴァルディがストーンズに割って入る。このヴィヴァルディが、岩からしみだしてるように悲しい。哀切。 愛人ボリス(北村有起哉)の車で素敵な高級レストランに出かけることになったアンドレア(鈴木京香)は、怒っている。「外で吸えよ」とボリスに言わ…
8時間(休憩こみ)。全く退屈しなかった。緊密なストーリー、笑える台詞、そして、考え抜かれた装置。「部屋」の枠取りにカラーの蛍光色の細い明かりが使われ、それは舞台の高さに比してとても低く見える。部屋は互い違いにまわるように組み合い、全体が奥へ…
すだく虫の音。赤い緞帳が閉じられ、暗く襞を見せている。風向計が大きな投光器(上手の流木の間にある)に照らされて黒い影を襞の上に落とし、真ん中に青いボートが、横向きに丸太のコロに乗り上げているのが見える。虫の音だと思っているうち、途中でふと…
香港の普通選挙を求める雨傘運動について、つめたーい気持ちでいるのである。それはかつての若い自分を見ている気分だ。熱くなりやすく善悪の判断がはっきりしていて、しかもそれを口に出し、行動にすぐ移す。おかあさんに行っちゃいけませんと言われたら決…
坪内逍遥の婿さんが、「室内劇」というのに凝っていて、自分の屋敷で芝居をやっていた。というのを思い出す、築六十年の日本家屋での公演。飯塚友一郎(お婿さん)邸よりは狭いんだろうけど、十二畳(?)程の座敷に客席の雛壇が4段くらい組まれ、後ろの大型…
なにしてくれてんねん、と関西弁ネイティブのようにつぶやきながら、英語の戯曲をロビーで購入する。英語かい。 『マクガワン・トリロジー』の第一部「狂気のダンス」は本当に暴力的で(ステレオタイプではある)、自分が撃たれるような気がする。やだな。バ…
懐かしい昭和30年代風の、ほんわかしている音楽。たちまち目の裏にホンダのカブやらオート三輪が走り出し、つっかけの、買い物籠を提げた女たちが行きかう。なつかしー。 緞帳に青い明りがあたり、現れた舞台に青く雪が降っている。若い女が二人(前田絵美、…
1968年よりあと、たぶん連合赤軍事件より前。知り合いの大学生とテレビを見ていた。大学紛争のニュースである。ヘルメットをかぶった学生が大学構内でシュプレヒコールを繰り返す。 「このとき〇〇ちゃんはなにをしていたの」 「見てた」 見てた。うーん。小…
劇場につくと軍国主義――独裁政治を表わす怖い絵が舞台いっぱいにかかっている。人間の折り重なる塔、下は呻く裸の貧しい人たち、真ん中にサーベルや銃を構えた軍人が描かれ、一番上にはシルクハットの資本家や上流階級の人々がいる。軍人のひとりが塔の中心…
上手隅にゆっくり暗くなりまた灯るクリスマスツリー。そこだけがさみしく片付いている。その他はすべてが乱雑に詰め込まれて、なんというか…喧しさを醸し出している。 舞台中央奥に黒板、きゃあきゃあいいながら(と感じる)メモ紙がマグネットでびっしり貼…
最後にニュースを真剣に観たのは、オウム事件の時。あの時オウムの信者がテレビにでて、その「言い分を聞く」体裁の番組が随分あった。オウムは神戸の地震を、「地震兵器の仕業だ」としていたが、スタジオでそのことを追及されると、東大生のかわいい顔をし…
舞台を両側から挟む客席に向けてアーチが仕立てられていて、その真ん中の橋になったところに字幕が出る。ハングルと日本語。字幕を見上げていた目をそのまま舞台面に落とすと、そこはもう、「層になった」、処置なしの散らかりの乱雑な部屋、ハングルと日本…